金沢から車で40分。カフェ併設の新感覚銭湯『凧温泉』で感じる自然の恵み
富山ゆかりの歌人、大友家持が詠んだ歌のひとつに「今よりは 秋風寒く 吹きなむを いかにかひとり 長き夜を寝む」というのがある。朝晩の冷え込みが日増しに強まり、温泉が恋しくなるこの季節。就寝前のナイトキャップ(筆者のお気に入りはホット梅焼酎)も良いけど、ぐっすり眠りたいときは温かい湯にでも浸かって身体をぽかぽかにするのが、なんだかんだ一番な気がする。
一句詠みたくなるほど自然が豊か。
居心地の良さを感じる、ミニマムな規模感とゆる〜い雰囲気
やってきたのは万葉の里、富山県高岡市にある『凧温泉』。ここは2種類の源泉が楽しめる天然温泉施設。金沢中心部から車で40〜50分と、アクセスは片山津温泉や山代温泉とそう変わらない。
温泉のある高岡市岩坪は、山の麓にある自然豊かな町。山小屋カフェのような佇まいの建物が景観にしっくりとなじんでいる。中に入ると真っ先に目に入るのが大きなロングボード。サーフィンとロードバイクをこよなく愛する店主の安部 求さんが、ゲストハウスのように温かな雰囲気で出迎えてくれる。ちなみに取材当日の朝も内灘まで波乗りに出かけてきたんだとか。店内には自然との共生を感じさせるゆったりとした空気が流れている。
ロングボードが目に飛び込んでくる。
店主の安部さん。家族経営のアットホームな雰囲気。
入ってよし、飲んでよし。持ち帰りもできます
『凧温泉』の源泉は、化粧水の湯と呼ばれる無色透明の単純泉と、美人の湯と呼ばれる炭酸水素塩泉の2種類。「皮膚の角質を柔らかくする美人の湯に入ってから身体を洗い、最後に保湿力の高い化粧水の湯に浸かるのがおすすめです」と安部さん。源泉かけ流しの内湯は26℃前後。そのほかも38〜41℃とぬるめに設定されているので、長湯をしてもゆでダコのようにはならない。
「飲める温泉」というのもポイント。地下深くから湧き上がったフレッシュな超軟水は、入浴前に飲むと湯あたりの予防になるだけでなく、体細胞も活性化させるとのこと。この温泉水は4リットル100円で持ち帰りができ、そのまま飲むだけでなく、ごはんを炊いたり出汁をとったり、お茶やコーヒーを淹れたりと、さまざまな用途で活用されている。
金沢出身のイラストレーター、八田哲一さんが浴室の壁をデザイン。
泉質の異なる2種類の源泉が楽しめる。
肌に優しいオーガニックの石鹸なども販売。
自家製アイスやドリンクが頼めるカフェも併設
冒頭で「山小屋カフェのような」と言ったのは当たらずとも遠からず。「さく井業をしている父はこれまで1,000本以上の井戸を掘りました。その中でも一番飲んでおいしいと感じたのがこの温泉水。その水を使ったコーヒーやお茶、ソーダなどを提供して、身体の内側から温泉を楽しんでもらおうとカフェを併設しました」。用意するドリンクやアイスのほとんどが自家製。さすらいの焙煎所「hanasato-coffee」の豆で淹れたコーヒーも飲めたりと、銭湯とは思えないクオリティが憎い!
ゲストハウスのような温かさに、カフェと温泉の要素を備えた『凧温泉』。立ち寄りのさいはシャンプーと石鹸、そして湯を楽しむ「心の余裕」を忘れずに。
広々としたカフェスペース。自家製ドリンクも人気。
自家製ラムレーズンとクリームチーズのアイスクリーム300円。
風呂上がりは外の景色を眺めながらゆったり寛げる。
イエティに会えるかも?
凧温泉
タコオンセン
富山県高岡市岩坪93
TEL.0766-21-6869(音声案内)
営業時間/14:00~22:00(最終受付21:30)
定休日/月曜、第1火曜日
料金/大人(中学生以上)440円、中人(小学生以上)140円、小人(乳幼児)60円
駐車場/20台
※こちらの情報は取材時のものです。
(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)