牛乳村の村長さんにアイスクリームとジェラートの違いを聞いてみた
アイスの消費量日本一。金沢市民は夏でも冬でも、家でも外でもアイスを食べる。かくいう筆者も冷凍庫にストックがないと不安になるほどのアイス好き。とある日、いつものスーパーで購入したアイスの袋に「大人の濃厚ジェラート」と書かれているのを見てふと疑問が湧いた。「アイスクリームとジェラートの違いってなに?」。その真相を確かめに、石川県白山市にある『牛乳村夢番地』を訪れた。
白山市松任地区を拠点にする酪農家たちの夢が詰まった『牛乳村夢番地』
「オーバーラン」って知ってました?
『牛乳村夢番地』は、地元産の「おまっと牛乳」を原料にしたソフトクリームやジェラートを製造する施設。2005年に白山市の米農家と酪農家のもと誕生した。村長の中村忠信さんは、JA(農協)の職員として県内の畜産業に携わっていたこの道のプロ。職員時代は北海道まで乳牛を買い付けにも行っていたそうだ。
村長の中村忠信さん。柔和な人柄ながらハーレー乗りというワイルドな一面も。
アイスクリームとジェラートの違いについて、中村さんに聞いてみた。
「日本で販売されるアイスには規格があって、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスという3つの種類に分類されます。基準となるのは乳成分の量。アイスクリームは乳製品から水分を除いた乳固形分が15%以上、その内8%は乳脂肪分でなければなりません。アイスミルクは乳固形分が10%以上で、ラクトアイスは3%以上。それ以外は氷菓と呼ばれます」
原料となる牛乳の品質がカギ。同店では地元の「おまっと牛乳」を使用する。
それではジェラートはどこに分類されるのか。
「ジェラートはイタリア語で〈凍った〉という意味を持つ氷菓子のこと。作り方は一般的なアイスクリームと同じです。ただし、イタリアでは通常5%前後の乳脂肪分でジェラートを製造するので、日本では厳密にいうとアイスミルクに分類されます。乳成分の違いからジェラートはアイスクリームよりも口当たりが軽くなりますが、オーバーランと呼ばれる空気の含有量が低いため、アイスの密度が濃く、なめらかな食感を生み出しています」
イタリア「カルピジャーニ社」の機械でオーバーランを調節。
つまりは乳成分がたくさん入って濃厚まったりなのがアイスクリーム、乳成分は少ないけど空気の量も少ない分、さっぱり滑らかなのがジェラートということ。ちなみにアイスの密度が濃い分、素材本来の風味が感じやすいのもジェラートの特徴だそうだ。
まさかあの食材がアイスになるなんて
アイスクリームとジェラートの違いについて納得したところで『牛乳村夢番地』のアイスクリームとジェラートも紹介してみよう。
まずは名物「おまっとソフトクリーム」。地元産「おまっと牛乳」の濃厚な味わいとさっぱりとした後味が、舐めるたびに交互に訪れる美味しさ。乳成分の量としてはアイスクリームに分類されるが、オーバーランの多さと製造温度の高さからより柔らかい食感が楽しめる。ベビーカステラをかじりながら食べるとさらにスイーツ度がアップする。
おまっとソフトクリーム320円。低温殺菌したミルクの風味が最大限に生かされている。
モーちゃん焼き300円。ソフトクリームとベビーカステラは意外と合う。
地元産の果物や野菜などをミックスした「おまっとジェラート」も美味。牛乳やコシヒカリ、そばといった地元の食材をふんだんに使用。なかでも白山市剣崎町で生産される、辛くて香ばしい唐辛子「剣崎なんば」を使ったジェラートは、一部のマニアから絶大な人気を集めている。
おまっとジェラート320円。写真はブルーベリーをマーブル仕立てにしたミルクベリー。
カップタイプのジェラートも販売している。
ちなみに店頭で販売するソフトクリームやジェラートはイートインもできるそう。「ゆくゆくは息子に店を任せて、自分はすぐ隣で牧場をやりたいんだ」と村長の中村さん。牛乳村の夢はどんどん膨らんでいく。
牛乳村夢番地
石川県白山市向島町760-1
TEL.076-274-3698
営業時間/10:00~17:00
定休日/火曜日
席数/カウンター2席、テーブル10席 ※全席禁煙
駐車場/10台
※こちらの情報は取材時のものです。
(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)