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「NINGEN OK」の坂口健一さんに聞きたい10のこと

インターネットの急速な普及と共に音楽業界のグローバル化が進んでいく一方で、地元を根城にしながら活動を続けるローカルミュージシャンが増えています。クリックひとつで遠い国の音楽をリアルタイムで聴くことができる時代。音楽におけるローカルとグローバルとの境界線は一体どこにあるのでしょうか。

 

北陸地方を拠点に活動するミュージシャンに、普段の生活や音楽との向き合い方などをインタビューする「HOKURIKU MUSIC」。今回のゲストは、金沢発のオルタナティブロックバンド「NINGEN OK」でドラムを担当する坂口健一さんです。

 

11月2日に金沢片町「social」で行われたライブの模様。

 

NINGEN OK(ニンゲンオーケー)
2009年に、山下拓郎(Gt)、坂口健一(Dr)のふたりが結成したロックバンド。「FUJI ROCK FESTIVAL」や「KAIKOO POPWAVE FESTIVAL」でのパフォーマンスが話題となり、2012年に1stアルバム「体温の行方」を発表。2017年にはサポートメンバーの石坂咲菜(Key)が正式加入し、地元石川のライヴハウスやクラブを拠点としながら、東京や関西でも精力的にライヴを重ねている。

バンド活動以外にも色々やってます。

―(1)「NINGEN OK」は、どうして結成されたんですか?

 

ギターの山下は高校の同級生。当時から一緒にバンドを組んでいたんですが、ある段階で自分がやりたい音楽とは違うと感じて、僕の方から解散を申し出ました。それからしばらく「自分がやりたい音楽」のイメージを膨らませていると、三年後に山下から「お前が好きなようにしていいから、また一緒にやろうよ」と連絡がありました。そのときはすでにやりたい音楽の方向性は頭の中で整理されていて、それはふたりだけで実現できるものでした。

 

―(2)影響を受けたアーティストは?

 

新たに活動を始めたときに、僕と山下が共通して聞いていたのが「54-71」という日本のオルタナティブロックバンド。金沢でライブをしたときに前座で出演させてもらったことがあるんですが、サウンド、パフォーマンス、世界観すべてに衝撃を受けました。「こんなバンド見たことない!」と、山下とふたりで盛り上がったのを覚えています。

 

「NINGEN OK」でドラムを担当する坂口健一さん。

 

― (3)地元の好きなもの、よく行く場所は?

 

海ですね。今、暮らしている内灘の海も好きだけど、やっぱり生まれ育った能登の海が一番。眺めていると子供のときの記憶が目覚めて、全身の細胞が騒ぎ出します(笑)

 

― (4)坂口さんが考える「音楽」と「仕事」とは?

 

自分自身のリソースを用いてクリエイトするのが、僕の理想とするワークスタイルです。それは音楽に限らず、植木職人のもとで勉強をさせてもらっている庭の仕事や、レザーアイテムの製作などにも言えること。それまで労働は音楽活動の対極にあるもので、労働讃歌のように楽曲が生まれると信じ、辛く厳しい環境下での労働に耐えることを美化してきたのだと思います。でも最近はバンド活動、レザークラフト、ガーデンワーク、これらを自己表現としてアウトプットして、さまざまな人たちの生活にふとした彩りを提供することが、自分自身のライフワークになっていると感じています。

 

坂口さんが手がけるレザーブランド「GUDA」のバッグ(本人提供)。

 

庭師の仕事に必要な道具入れも自分で作る(本人提供)。

いい歳だからとか、
予算がどうとかは関係ないのかな。

― (5)なぜ、金沢を拠点に活動しているんですか?

 

音楽を作るときは暮らしている環境が少なからず影響するので、間接的に金沢での生活が音に溶け込むことはあると思います。でも、とくに金沢を拠点とすることにこだわりがあるわけではありません。「〇〇だから××できない」という諦めやケジメが美学になった時代から、「〇〇だけど△△できる」という前向きな時代に変わったことで、ローカルだからとか、一人だからとか、結婚したからとか、いい歳だからとか、予算がどうとかはあまり関係なくなっている気がします。「どこで活動をしているか」ではなく「どんなことをしたいのか」が一番大切なんですね。

 

― (6)東京や他エリアの音楽シーンを魅力に感じることはありますか?

 

色んな地域からミュージシャンが集まるグローバルな音楽シーンだからこそ、東京のミュージシャンたちは顔と顔のつながりを大切にしている気がします。肌感覚で認めてもらえれば一気にステップアップできる場所ですし、実際にチャンスを掴んで売れていった仲間もいたりして、やっぱり東京という場所には大きな力があるんだなと感じます。

 

「YETI’S YARD」の代表として、ガーデンワークも手がけている(本人提供)。

 

庭石や樹木などの自然物を駆使して、ひとつの造形空間を設計、製作する(本人提供)。

 

―(7)坂口さんといえばストイックなライブパフォーマンスが印象的ですが、ライブ中はどんなことを意識していますか?

 

一発一発、ドラムを打つその瞬間のことしか考えないようにしています。一発打って、また一発の繰り返し。「今、今、今」を感じるように意識を集中させています。 次の展開を意識するとミスしてしまうんです。 僕たちにとってライブは充満したエネルギーを破裂させ、全身全霊で世界に解き放つ瞬間。スティックをガチガチに握った手がつることはしょっちゅうだし、放ったエネルギーが跳ね返って来たかのように、演奏が終わったら三人とも流血していることもあります。 とにかく「NINGEN OK」なりの世界に放つ愛情表現としてライブに挑んでいます。

 

―(8)仲の良いミュージシャンはいますか?

 

「YOCO ORGAN」です。イベントで知り合ってすぐに意気投合しました。同年代ということもあって、お互いの音楽活動を切磋琢磨できる仲間。音楽性はまったく違うけど、刺激を受けることも多いんです。

 

エネルギーを破裂させる瞬間(撮影:Miki Matsushima)

 

―(9)どんな場所で音楽していますか?

 

よくライブをするのは金沢片町の「social」。11月2日にも京都のインストバンド「NABOWA」とツーマンでライブをしました。楽曲の制作は基本的に僕がギターで作ったものを山下と一緒にスタジオで練り上げて、ある程度仕上がった段階でキーボードの石坂がメロディを乗せていく感じです。スタジオでジャムっぽく作ってもなかなか良いものができなくて。それよりも家にこもって悶々としながらアウトラインを作って、それを形にしていく方が自分たちには合っていると思います。

 

―(10)最後に今後の活動予定を教えてください。

 

2020年中にセルフレコーディングした音源を発表するのが当面の目標ですね。すでに楽曲はいくつかあって、レコーディングもしているんですが、なかなか満足のいく仕上がりにならなくて。初めてのセルフレコーディングなので未知な部分はありますが、音源にしたときに自分たちが納得いくものができればリリースできると思っています。

 

「NINGEN OK」のライブ・リリース情報はTwitter(@ningen_ok)をチェック!

 

(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)

 

◯北陸を拠点に活動するミュージシャンにインタビューする【北陸ミュージック】

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