スパイスと和の味が融合した進化系ジャパニーズカレー|煩悩を断ぜずして咖喱を得るなり #15
我が国にカレーが伝わって150年、今なお独自の進化を遂げているジャパニーズカレー。100人いれば100通りの味がある。こんなにも作り手の個性が現れる料理って、一体どれだけあるんだろう。
そんな話はさておき当コラムではこれまでたくさんのカレーを紹介してきた。どれも美味しく、胸を張ってレコメンドできるものばかり。しかしそんな中で、ずっと恋焦がれていた店もあったりする。
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仲良し夫婦が営むカレーと珈琲の店
場所は金沢市玉鉾。邑井(むらい)さん夫妻が経営する『ムライ食堂』がそのお店。繁盛店だけあってなかなか取材の日程が合わなかったけど、今回ようやく訪れることができた。
ちなみにすぐ隣は、かつて「BONNO」の事務所があった場所。漂ってくるスパイスの香りに誘惑されまくったのが懐かしい。
オープンしたのは2020年。数年前から独学でカレー作りを始めていた佳代さんと、珈琲の自家焙煎をライフワークにしていた元也さんが二人で切り盛りしている。
この店の魅力は夫婦の人柄が垣間見えること。気取らず、飾らず、自然体。まるで友人の家に招かれたような雰囲気で食事ができる心地良さ。時折インスタグラム(@murai_shokudo)では、ハンバートハンバートさながらの夫婦デュオが披露される。
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毎日でも食べられる身体に優しいカレー
注文したのは、ココナッツ豆乳キーマカレーとトマトチキンカレーの2種盛り(1,300円)。油モノが苦手な佳代さんが自分のために開発したノンオイルカレーだ。
独学といっても佳代さんは調理師専門学校卒。基本はしっかり抑えている。油と小麦粉不使用でカラダに優しく、かといって物足りなさを感じない絶妙なさじ加減。玉ねぎをじっくり炒めた自家製チャツネをベースに、スパイスをガツンと効かせつつも辛さは一切なし。醤油、みりん、塩麹などの調味料で味を整え、日本人が親しみやすい味に仕上げている。
「ごはんとの相性を第一に考えています」と佳代さん。石川県産のコシヒカリを使ったターメリックライスも、炊き上がりの米の硬さからしゃっきり感まで余念がない。
写真上のトマトチキンカレーは、鶏モモと手羽元をホロホロになるまでじっくり煮込んだもの。甘い香りとほろ苦さが特徴のドライハーブ「カスメリティ」をトッピングし、カレーの風味をグッと引き立てている。
こちらはココナッツのコクと豆乳のまろやかさがクセになるキーマカレー。付け合わせのレモンを途中で潰すと、あら不思議。さっぱりした味へと変化して、満たされたと思っていた食欲がスイッチオン。これはもう、おかわりコース確定っす。
ちなみに注文時にごはんの量を大中小(150〜250g)から選べるのに加えて、おかわりしたくなるのを見越してか、ごはんとルーのおかわり(各120円)も用意。さらに「それでも足りない!」という人のために、ごはんとルー増し増しの特盛(+280円)なんてのもある。
副菜もごはんとの相性を最優先。人参の黒胡椒ラぺ、大根のゆかりマリネ、豆乳マッシュポテト。カレーと混ぜて食べることで、味や食感の変化も楽しめる。
全体的な味はといえば、スパイシー&マイルド。香りが豊かで日本人の味覚ともベストマッチ。これなら辛いものが苦手な人や子どもでも安心。辛党であっても、卓上の辛味スパイスを使って好みの辛さに仕上げれば物足りなさは感じない。
食後は元也さんが淹れる自家焙煎珈琲でブレイク。いつもはドリップ一択だけど、今回は見栄えも意識してカフェラテ(530円)を注文。
ちなみにコーヒー豆は新鮮な状態で提供できるよう、必要な分だけ手回しのロースターで少量ずつ焙煎しているそうだ。
カレーと珈琲のように相性抜群な邑井さん夫妻が営む『ムライ食堂』。ようやく訪れることができた喜びを感じながら、「長いこと待っていたんだ〜」と鼻歌まじりで帰路に着くのであった。
ムライ食堂
石川県金沢市玉鉾3-223
TEL.076-220-7353
営業時間/11:30〜15:30、17:30〜20:00
定休日/月曜、第3日曜日(木曜と日祝はランチのみ営業)
座席数/カウンター4席、テーブル14席
駐車場:8台
※こちらの情報は取材時点のものです。
(取材・文/ヨシヲカダイスケ、撮影/林 賢一郎)