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爆裂地方都市⑮|僕、アミになっちゃった 〜BTS劇的ビフォーアフター編〜

僕らのローカルシティポップ【爆裂地方都市】
爆裂地方都市・金沢の地から、ホコリにまみれた名曲から知られざる新曲までを掘り起こす!石引のカレーマスター・モカさんがカレーの合間にしたためた〈俺だけのディスカバリー〉がここに。

 

BTSラスベガスコンサートの配信を楽しみに待っていた2022年4月、K-POP第4世代の8人組ボーイバンドStray Kids(通称スキズ)6枚目のミニアルバム『ODDINARY』がビルボード全米アルバムチャートで初登場1位を奪取!

 

Stray Kids 「MANIAC」

 

全米1位はBTS、Super Mに続いて3組目の快挙です。いや〜K-POP凄ぇなぁ…なにわ男子!にほん男子に改名してスケールアップしてアメリカを目指してくれ!しかし今後、日本のアイドルが全米1位になることはあるのかな?無理?昨年2021年の全米チャートを調べててもBTSに続けとばかりにアメリカは引き続き完全にK-POPインヴェイジョン状態です。

 

LISA(BLACKPINK)「MONEY」(2021年/全米84位)

 

TOMORROW X TOGETHER『The Chaos Chapter: FREEZE』(2021年/全米5位)

 

aespa「Next Level」(2021年/全米65位)

 

TWICE『Formula of Love: O+T=<3』(2021年/全米3位)

 

SEVENTEEN『Attacca』(2021年/全米13位)

 

NCT127『Sticker』(2021年/全米3位)

 

ENHYPEN『BORDER:CARNIVAL』(2021年/全米13位)

 

まさに60年代前半にビートルズに続けとイギリスのローリングストーンズ、キンクス、アニマルズ、マンフレッドマン、フーたちが、80年代前半にヒューマンリーグ、バナナラマ、カルチャークラブ、ワム!、ユーリズミックス、デュラン・デュランらがアメリカに乗り込んでチャートを席巻したときたみたいな流れですね。

 

さかのぼること2010年、ミュージシャンの近田春夫さんは当時のコラムで『(家電量販店のテレビから流れていた少女時代「Gee」のMVを耳にして)「あッ、今、日本の商業音楽が韓国に抜かれようとしている!」まさにその瞬間に立ち会ってしまったような気がしてしまったのである。』『坂本九の「上を向いて歩こう」の次に米ビルボードのシングルチャートでアジア人アーティストが首位を獲得するなら韓国人になるだろう。』と書いていて10年以上前からK-POPの全米制覇を予言してそれを完璧に的中させました。さすが!

 

少女時代「Gee」(2009年)

 

2012年にはくりぃむしちゅー上田晋也が司会の討論バラエティ番組「なかよしテレビ」での日本・中国・韓国の代表者がそれぞれのお国自慢をする特集で韓国人タレントのリュウ・ジヒュンが「日本の芸能界は草野球レベル。韓国の芸能界はプロ野球レベル」と発言。それに対してマツコ・デラックスは「全然納得できない」「K-POPなんてアメリカのパクリ」と反論。それにリュウ・ジヒュンが「K-POPは今、アメリカの市場に上陸したんです。J-POPはそこまですら行けてない。」と主張すると激怒したマツコが「上陸しただけでしょ?(J-POPは)行こうとしてないだけ!」「アメリカで評価されることが全てなの!?」「嫌だったら(日本から)出ていけ!(日本はK-POPも)受け入れてやってんだよ!こっちは!」とブチギレるというシーンがあった。わざと番組を煽るような演出も多分にあっただろうけど、10年経ったら本当にK-POPみんなJ-POPを置いてけぼりにしてアメリカ行っちゃったじゃないか!マツコ!

 

 

当時は宮崎あおいの元旦那が韓流ブーム偏重を批判して騒動になったように「嫌韓」の空気に変わってきたあたり。「K-POP出てけ!」とか言ってる頃にBTSは共同生活をしながら猛特訓に励んで翌年デビューするんですね〜。

 

「♪お前等が遊んでる頃 俺は夢を切り拓きながら 睡眠を削りながら♪毎日徹夜でボールペンを握って♪日が昇った後に目を閉じる♪見せてやるよ いままで磨いてきたもの♪俺と同じくらい努力してきたなら石を投げろ♪​​​​​​​​俺達に怖いものはない」

 

BTS「We Are Bulletproof Pt2」(2013年)

 

そして2012年はBIG BANG『Alive』が全米150位にチャートインしたのも快挙なのにPSY「江南スタイル」が7週連続全米2位をぶちかましてたのでまさに嘘偽りなく「K-POPは今アメリカの市場に上陸したんです。」な年でした。(その頃の僕はといえばまだ韓流も嫌韓も関係ない古いレコードばかり聴いてましたが…)

 

BIGBANG 「 FANTASTIC BABY」(2012年)

 

PSY「GANGNAM STYLE」(2012年)

 

さらに20年以上さかのぼって1999年頃、僕が京都のCDショップで働いてたときに洋楽担当のP先輩(男性)に「モカ君!いま韓国の音楽シーンがすごいことになってるぞ!」と色々教えてもらったことを思い出しました。P先輩は元々英米のロック、パンク・ニューウェーブの専門家だったのに急にK-POPにどハマりしてまだSNSも浸透してないインターネット黎明期に自作ホームページを作って日本では知られてないK-POP情報を紹介したり現地までライブに行ったりと早すぎるアンテナで、その中でもいちばんハマってたのが韓国アイドル第一世代で社会現象になるほど超絶的人気だったグループH.O.T.(エチョティ)。

 

1996年結成で人気絶頂の2001年に兵役のため活動休止(当時は大学卒業の年齢で兵役という風潮だった)、2018年の再結成ライブはソウルオリンピック 競技場で10万人集めたそうな…!当時のアイドルは茶髪なだけで批判されたりテレビに出れないような保守的な韓国で若者の苦悩や社会問題をテーマにしたラップと激しいダンス、メンバーが作詞・作曲・編曲するスタイル、グループの応援カラーというのを定着させたのもH.O.T.なので、まさに元祖BTSというかK-POPのフォーマットを完成させたグループです。

 

H.O.T. /Candy(1996年)

 

P先輩がソウルオリンピック競技場で開催されたH.O.T.のライブに行った翌日、ホームページにP先輩の奥さん名義で「主人はH.O.T.のライブ中に興奮状態になり心不全で急死しました。」と書いてあり、僕もそれを本気で信じてショックを受けるくらいP先輩はH.O.T.が大好きでした。

 

P先輩には「モカ君!これからボアって女の子が日本進出してくるけどマジでレベル高すぎるぞ!」と力説されたこともありました。ボアとはもちろんあのBoA。テレビでしか知らない日本人にとっては「ゼロ年代に日本で活躍してた韓国の女性歌手」くらいの認識ですがBoAも2009年にアメリカに進出してアルバム『BoA』を全米127位にチャートインさせてます。

 

BoA / Eat You Up(2009年)

 

あと同じCDショップのM先輩(女性)も韓国のヒップホップが大好きで、「K-POP追っかけ界のボス」的な女性とも交流があったM先輩には2000年に来日した韓国のカリスマヒップホップデュオJinuSean(ジヌション)のライブに連れてってもらった上に追っかけ界のボスが楽屋に入れてくれてメンバーと一緒に写真撮った思い出あります。ジヌションは現在も顔役として後進を育て若手からもリスペクトされてるK-ヒップホップ界のレジェンド。

 

JinuSean / A-YO (2000年)

 

…と、最近は周回遅れでBTS「DYNAMITE」ビフォーとアフターのK-POPの点を線にする作業をしています。慶應義塾大学法学部教授でアメリカ文学、ポピュラー音楽研究をされている大和田俊之さんがインタビューで『そもそも(アメリカで)アジア系に黄色い声援が飛ぶだけでもすごい。ありえないです。昔はアジア系男子といえばオタクのイメージだったんですよ。BTSはそこも完全に塗り替えましたね。』と発言されていて僕も最初その状況にびっくりして知りたくてBTSに入ったけど、その答えは大和田さんの著者『アメリカ音楽の新しい地図』に書いてありました。

 

かいつまんで上げると①在米アジア人ラッパーやダンサーの活躍のおかげによるアジア人への認識の変化 ②#MeTooムーヴメントなどによる旧来の「有害な男らしさ像」への嫌悪 ③アメリカ人男性より細身でメイクをしているので男性でも女性でもセクシャルマイノリティでもない神秘的な「新しい性別=第三の性」という存在 ④老若男女関係なく生きづらさを抱えている人に刺さる歌詞 ⑤完璧なパフォーマンスと友人のようなパーソナリティ、などが渾然一体となり時代と合致したということみたいです。興味あれば本を読んでみてください。なぜK-POPはブラックミュージック度が強いのか?なぜアメリカで受け入れられたのか?など詳しく分析されてます。

 

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【参考記事】現代アメリカ史を刷新するポピュラー音楽スタディーズ『アメリカ音楽の新しい地図』(じんぶん堂)

 

あと、BTSきっかけで今までそんなに興味がなかったK-POPを聴き出したのと、ジャンルやアーティスト関係なく「現在全米1位の曲」を積極的に聴くようになりました。ありがとうBTS!6月10日発売のニューアルバム楽しみにしてます。

 

追伸:BTSの影響力が世界規模になってき過ぎて政治や環境、人権など多くの問題についての声明をしてほしいという期待についてRMが「声を上げるには知識が足りない、自分達がそんなに賢い人間だとは思えない。」と言ってるけど逆にちょっと不用意なことをすれば国際問題になるし黙れば批判されるしと、ミュージシャンとして窮屈になってきてるのが気の毒。でも、将来はキム・ナムジュン大統領になってほしいです!(過剰な期待)

 

【参考資料】

大和田俊之『アメリカ音楽の新しい地図』書評(評:細馬宏通/webちくま)

BTSはビートルズかもしれない 『アメリカ音楽の新しい地図』大和田俊之さんインタビュー

BTSの音楽がアメリカ人に受けている理由(評:大江千里/ニューズウィーク日本版/2022年4月12日号)

なぜBTSだったのか。全米1位の背景や意義を米Billboardコラムニストに訊く

グラミー賞の女王リゾ 『I love Jimin』3年目 思いっきり愛情攻勢

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執筆者プロフィール

モカ
学生街のブラッスリー『JO-HOUSE 石引』2代目カレーマスター/私設公民館『じょーの箱』大家さん。もうすぐ若者ぶらずにおっさんの武器も使えるいちばん旬なとき、さみしさは昔よりも現実味おびてきたね…でも明日はくるSweet Sweet 45 Blues。

ツイッター:@MoCurry
フェイスブック:@モカ ジョーハウス
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