趣味が作曲!?音楽を手作りするとは?|Funa先生の音楽室 #23(最終回)
約2年にわたり連載させていただいた当コラムですが、今回が最終回です!というわけで、今回はいつものゲスト対談ではなく、総まとめ的に「作曲を趣味にすること」の魅力について書いてみたいと思います。あらためていろいろ考えてみたら、現在の音楽業界が抱える問題にまでぶつかり、その末に一つの答えに辿り着きました。音楽好きの方、ぜひ最後までお付き合いください!
さて、あなたにとって良い音楽とは何でしょう?
・素晴らしい歌
・技術を極めた演奏
・心に響く美しいメロディー
・共感できる歌詞
いろいろと頭に浮かぶと思いますが、言うまでもなくそれらの条件を満たす音楽はこの世界には無数にあります。良い音楽は世界に溢れかえっている。たくさんありすぎて、もはやそれくらいの条件では「特別なもの」とはなりません。
このコラムを書いている今も音楽はどこかで生まれ続け、明日にはバズっているかもしれない。昔から受け継がれる名曲達にそれらが加わり、アーカイブはさらに膨大になっていく。この世界には良い音楽があまりにも多く溢れており、音楽好きとしては嬉しい反面、一曲一曲の価値は下がっているのではないかと複雑な思いを感じたりするのです。
「一曲一曲の価値が下がっている」
音楽を仕事にしていて誰よりも音楽の価値を信じている僕ですらこう思っています。一般の方にとっては尚更でしょう。こんな小難しいことを意識することなく、音楽を随分とお手軽に大量消費しているのが現代です。
動画投稿サイトの普及で無料で聴ける。音楽配信サービスの普及で月額1000円ほど払えば何万もの曲に一瞬でアクセスできる。
かつて10曲前後しか入っていないCDアルバム1枚が3,000円ほどしていた時代からするとかなりのデフレ状態です。入手があまりにもイージーすぎて、良い曲を見つけてもそれが貴重な出会いとまでは感じない。貴重だと思っていないから、誰の、何という曲かまでは知ろうともしない。アーティスト名、曲名をチェックしておかなかったら次見つけるのが大変かもしれないのに。それでも構わないという人は少なくありません。
そもそもそんなことチェックしなくても、また聴きたくなったら履歴を辿れば見つかるし、見つからなかったとしても大したことはない。なぜならインターネットが自分好みの曲を提案してくれて、代わりはいくらでも見つかるから。アーカイブが膨大、かつ瞬時にアクセスできるようになった現代ならではの感覚です。
この状況は消費者目線ではとてもありがたくて、僕も日頃それらのサービスに大変お世話になっているので、これが間違っているとは思いません。真っ当な進化、成長だと考えています。ですが、音楽の価値という側面から考えると複雑な気持ちが残るのです。
音楽、もしくは音楽業界全体の価値は下がっていないと思うのですが、一曲単位で考えると下がっている傾向にあると思わざるを得ません。
この世界に音楽がどんどん増えていき、溢れるほど膨大になっていく。このことは不可逆です。元に戻ったり、減ったりすることはない。全人類がある日突然過去の曲を忘れるなんていう世にも奇妙なことが起きない限り、音楽は減らない。
良い音楽って何だよ!??そんなのそこら中に溢れててなんの価値もないよ!そこそこ平均的で、どれ聴いたってどうせ良い曲だよ!
・・・何だよ・・・良い曲って・・・
自暴自棄(笑)。
そこで僕は音楽の評価方法を変えてみることにしました。良いかどうかではなく、大切かどうかです。
あなたの心に一生残る「大切な一曲」とは?
悔し涙を流した時に励まされた応援ソング
大恋愛した時に共感しまくったラブソング
生で観た推しのコンサートで最高の演出だった曲
おそらく「大切な」となると、人生のどこかのタイミングに寄り添ってくれた曲になるのではないでしょうか?思い出に紐付いた曲って特別ですよね。それでは、上記の他にも音楽が大切なものとなり得るケースはないのか?そこで考えられる可能性が「音楽の手作り」です。手作りというと、音楽よりも料理の方が一般的だと思いますので一旦料理に例えてみましょう。
外食に出かけ、雰囲気あるお店でプロの料理を食べることはとても美味しいし楽しい。その一方で自分自身や家族、大切な人が作った手作りの料理もかけがえないものですよね。音楽も一緒だと思うのです。
音楽を手作りする。うまくできたときの達成感。褒めてもらえたときの喜び。そりゃあ、プロと比べたら拙いものかもしれません。しかし、それはきっと「大切なもの」となるのではないでしょうか?個人的な思い入れという領域においては、プロのソレを越えてしまう可能性すら秘めている。
「良い曲」を超える「大切な曲」の誕生です!!
料理と比べるとまだまだ手作り人口は少ないですが「音楽の手作り」をもっともっと広めたいと思っています。そんな中、2023年6月11日に「音楽の手作り」をしている作曲愛好家達が自身の作品を発表するイベントを開催しました!
CUBASE(キューベース)という代表的な音楽制作ソフトを愛用して作曲を楽しんでいる人達が集まるイベントで、その名も「CUBASEファンミーティング」。ただ曲を聴くだけでなく、CUBASEの作曲画面を大型スクリーンに投影して、作曲者本人による制作秘話や作曲テクニックの解説が聴けるというもので「音楽ってそうやって作るんだー!」という驚きと発見の連続だったかと思います。
当日は石川、富山、福井、北陸三県から作曲愛好家16名が出演、満員御礼のお客様の前でオリジナル曲を解説&披露しました。
メジャーアーティストのコンサートなどと比べれば小さな小さなコミュニティーではありますが、そこで披露された音楽は参加された皆さんにとってきっと「特別なもの」となり、作者本人にとっては「大切な一曲」になったと思います。
これからも様々な活動、発信を通して「音楽の手作り」の魅力、楽しさを伝えていきたいと思います。もちろん料理において自炊しない人がいるように、みんながみんな手作りしなくてもいいと思います。外食にもいきましょう!プロの作品はやはりすごいですから。
でも、料理くらいのライトな気持ちで「そっか!音楽って自分で作ってもいいんだ!」と思い付く人が増え、実行に移す人が増えたら、イージーに大量消費されがちな昨今の音楽界に「大切な曲」が生まれると思うのです。
自分で作った、家族が作った、大切な人が作った、身近な人が作った、オーダーメイドで作ったなど、大ヒットしなくても、一人一人の心の中に大切なものとして刻まれる曲。それは所詮小さな花のようなスケールかもしれませんが、それらが世界中に咲いているとしたら…。
音楽の力は決して衰えていません。
さて、いかがだったでしょうか?最終回はゲストなしで現在僕が音楽に対して考えていることを一人語りさせていただきました。
これからも僕は音楽の価値を信じて作り続けます。そして、培った知識、技術は独り占めしません。より多くの人が音楽の手作りを楽しむ世界を目指し、広く音楽の作り方を伝えていきます!
当コラムはこれにて終了です。ご愛読いただいた皆様、関係各位、ありがとうございました!