耳の聞こえないアスリートのためのオリンピック|DJ TOSHIKIのオトノイロ #08
5月1日から開幕し、先日15日に閉幕を迎えた、第24回夏季デフリンピック競技大会 ブラジル2021(1年延期になったため2021年表記)。
オリンピック・パラリンピックは昨年に東京大会があったこともあるので、知らない方はほとんどいないと思いますが、”デフリンピック” は初めて聞いた方も多くいると思います。デフリンピックとは、デフ+オリンピックのことで、デフ(Deaf)とは、英語で「耳が聞こえない」という意味。デフリンピックは国際的な「ろう者のためのオリンピック」で、今回、日本からは選手95人を含む計149人の選手団がブラジルへ派遣されました。
当コラムのVol.6「音声の見える空手道大会」でも触れていますが、スポーツをするうえで、審判の笛やスタートの合図などはとても重要な情報であり、聞こえない・聞こえにくい方にとってどのようにその情報を伝えるかは、記録や勝敗に大きく左右する問題となります。
例えば、陸上や競泳のスタートではブザーやピストルの音が聞き取れない場合もあるため、スタート音と同時に「フラッシュランプ」が点灯するようになっています。そのような「視覚保障」があることで選手それぞれの聞こえ方によるハンデをなくしています。
この「フラッシュランプ」はバスケットボールやハンドボールなどの球技や様々な競技でも「視覚保障」として活用されています。
また、スタート時だけでなく、水泳では最後のターンの時に水面にしぶきを立てて知らせるなどの工夫もされています。
サッカーやラグビーなどは屋外の広い競技場で試合が行われるため、フラッシュランプではなく審判の旗が合図となります。審判が笛を吹くと同時に旗を揚げたり大きく手をあげることで選手に視覚的に伝えています。
そのほか、コーチからの指示や選手同士のコミュニケーションはアイコンタクトや手話を使うことが多いので、手話ができない人のためにチームに手話通訳がいることもあるようです。
聴覚障害は外見からは気づかれにくい障害であり、聞こえないことによる問題が理解されにくい側面もあります。スポーツをする時も同様で音声情報のみでは競技を行うのは難しい場合もあり、選手が最高のパフォーマンスをするためには「視覚的な情報保障」は必要不可欠です。
デフリンピックは、1924年のフランスの夏の大会から始まり、100年近い歴史があります。その歴史あるデフリンピックの2025年大会は日本での初開催を目指しています。日本大会が実現し、デフアスリートが活躍することで、多くの方に聴覚障害というものに興味を持ってもらい、社会での「聞こえない・聞こえにくい」ことへの理解がすすむことを期待しています。