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農家がもてなす能登食材のスパイスカレー|煩悩を断ぜずして咖喱を得るなり #25

三度の飯より咖喱好き。カレーをこよなく愛するライター吉岡が、煩悩のおもむくままに地元石川のカレーを食べ尽くす!

 

実店舗を持たない営業スタイルでお馴染みの間借りカレー。その多くは本業を持ちながらスパイスの魅力にハマった人たちが、理想の味を求めてオリジナルのカレー作りに励んでいるわけですが、なぜか個性的なお店が多い気がするのは筆者だけでしょうか。

 

今回訪ねたのは七尾市にある『白馬咖喱』。若き農業家が今年4月に始めた間借りのカレー屋です。

規格外野菜を有効活用するため開業

 

間借りの“間”となる「ひのともり」は、東京から移住した日野シェフが営む人気のフレンチレストラン。『白馬咖喱』は、このお店の定休日となる月曜日のみ営業しています。

 

ちなみに白馬というのは店主・守崎祐也さんの農場がある七尾市白馬町に由来するもので、はくばではなく「しろうま」と読みます。そういえば七尾って、鶴とか魚とか、熊とか亀とか、生き物の名前が付く町が多い気がするけど、なんでだろう?

 

 

こちらが守崎さん。見た目の印象通り、誠実で爽やかな好青年。高校時代から食に興味があり、農学部のある北海道の大学を卒業した後は、台湾で一年間のワーホリ生活。そこから地元七尾に帰郷して、若干25歳にして白馬農園を設立したそうです。

 

 

「野菜を作っているとどうしても形が悪かったり、一部だけ傷んでいるものが出てしまうんです。そうした野菜を有効活用するために飲食店を兼業できないかと思って。野菜とカレーとの親和性の高さを魅力に感じたのと、スパイスの力で旬の野菜の持ち味を引き出す楽しさもあって、カレー屋を始めました」と守崎さん。

 

メニューは月替わり。基本的にタイプの違う2種類のカレーが30食限定で提供されていて、今回は能登豚肩ロースのスパイスカレーとサグチキンカレーを用意。筆者はふたつを同時に楽しめるあいがけを注文しました。

旨味たっぷりのベジブロスが決め手に

あいがけカレー(2種盛り)1,500円

 

農家である守崎さんらしい盛り合わせに感動。朝採れの新鮮なサンチュとサニーレタスが輝いて見えます。ほかにもバターソテーしたズッキーニやソラマメ、ニンジンのラペなど野菜が盛りだくさん。一皿で野菜もスパイスも吸収できるのはありがたいですね。

 

守崎さんのこだわりは、能登の食材を優先して使うこと。能登豚や白馬農園で育てた野菜はもちろん、米は能登島で栽培されたコシヒカリ、魚介を使う場合も近海で揚がったものを仕入れるなど、地物へのこだわりは相当なものがあります。ビタミンEが豊富な米油を使用するのもポイント。

 

 

能登豚肩ロースのスパイスカレーは、ゴロッとした肉の塊が食欲をそそる男前なカレー。この能登豚の火入れが絶妙で、しっかりと焦げ目を付けて香ばしさを引き出し、肉の旨みをギュッと閉じ込めているので、口に入れるたびに豊かな味が広がっていきます。ハラリとまぶされたカスリメティもいい塩梅。あぁ、思い出すだけでヨダレが止まらない…。

 

 

白馬農園のほうれん草をたっぷり使ったサグチキンは、バターを加えてマイルドな味わいに。無農薬で栽培されたほうれん草は、生でも柔らかくて美味しいと地元でも評判なのだそうです。

 

これだけ美味しいカレーを作るのだからどこかの有名店で修行したのかと思いきや、完全に独学で主にYouTubeなどを見て研究したのだとか。もともとカレー好きで、八角などの香辛料や香菜を多用する台湾の食生活もヒントになったそうですが、それにしても短期間でここまでの味に仕上げるとは恐れ入ります。

 

 

このふたつのカレーの味の決め手となるのがベジブロス(野菜だし)。丹精込めて育てた野菜の旨味が、まるで白馬の王子様のように颯爽と現れ、個性あるスパイスの風味を優しくまとめてくれます。

 

見た目以上のボリュームとパンチの効いた味わいながら、意外とあっさり食べられるのもこのベジブロスのおかげだと推測。ちなみに守崎さんは野菜作りの過程にもこだわっていて、完全無農薬とまではいかないまでも、ビールの搾りかすを肥料として使ったり、極力自然なものを使おうと試みているそうです。

 

 

こちらは守崎さんがスパイスカレーとのペアリングにも最適だと推すクラフトビール。筆者も大好きな金沢港のブルワリー「BREW CLASSIC」のワイルドピッグドラッグレース(600円)です。そう、カレー好きなら記憶に新しい、ののいちカレーフェスでサーブしまくっていたあのビール。ちなみに野菜の肥料になっているビール粕は、このブルワリーから頂戴しているみたいですよ。

 

農家ならではの持ち味を最大限に発揮した『白馬咖喱』のスパイスカレー。これからの時期はイベント出店も増えるそうなので、気になる人はぜひInstagramをチェックしてみてください。

 

 


 

白馬咖喱(しろうまかれー)

住所:石川県七尾市小島町大開地1-5(ひのともり) [地図]
TEL:080-1954-1624
営業時間:11:00〜14:00、17:00〜21:00
定休日:月曜日のみ営業
駐車場:10台
instagram:@shiroumacurry

 

撮影:林 賢一郎

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