元気がみなぎる口能登のアーユルヴェーダカレー|煩悩を断ぜずして咖喱を得るなり #29
三度の飯より咖喱好き。カレーをこよなく愛するライター吉岡が、煩悩のおもむくままに地元石川のカレーを食べ尽くす!
「おせちも良いけどカレーもね♪」。いまや店頭では見る機会が減った“ククレカレー”の名文句である。昭和時代には正月になるとこのククレカレーと写ルンです(お正月を写そう♪)のCMが無限ループで流れ、筆者も子どもの頃はよく口ずさんでいた。ザイアンス効果、恐るべしである。
そんな話はさておき、昨年夏にかほく市にスリランカカレーの店がオープンした。かほく市といえば「コイノボリ食堂」の名前が真っ先に思い浮かぶが、店舗を持たないスタイルになった今、口能登のカレー好きにとっては超朗報だったに違いない。
※この記事は1月4日に公開を予定していたものです。
スリランカで出会った夫婦が営む人気店
訪れたのはかほく市の浜北にある「curry YASHI」。本場のシェフが作るスリランカカレー専門店である。経営するのはスリランカ出身のR.M.インディカプ シュパクマラさんと奥様の千歌さん。2階建ての店舗の1階がスリランカ産紅茶とワッフルの店「hasu TEA」に、2階が「curry YASHI」となっている。金沢中心部からお店まで車で約30分。思っていたよりも近く感じた。
インディさんと千歌さんの出会いは本国スリランカにて。旅行中の千歌さんが宿泊したホテルで働いていたのがインディさんだったそう。それから蜜月を重ね、結婚を経て、2018年に千歌さんの地元であるかほく市でお店を開業。昨年夏に移転リニューアルという形で新たにお店をオープンした。ちょっぴりシャイなインディさんと千歌さんの掛け合いは、見ているだけでほっこりする。
「curry YASHI」のメニューは、一番人気のプレートランチのほかにも、スリランカの定番料理「コットゥ」や、スパイシーなミックスライスなどが揃う。スリランカ弁当をはじめとするテイクアウトメニューも豊富だ。
日本人が親しみやすいどこか懐かしい味
ライスアンドカリー フルセット(スープ付き) 1,450円
筆者が注文したのは、数種類のカレーと副菜をごはんを囲むようにして盛り付けたライス&カリー。たくさんの具材を煮込んで作る日本のカレーとは違い、ひとつの食材ごとにカレーを作るのがスリランカカレーの特徴。それぞれスパイスの調合や味つけが異なる、いわゆる日本でいう定食のイメージだ。
「辛味、甘味、酸味、苦味、塩味、旨味のすべての味覚がこのプレートの中に存在しています。それらを混ぜながら食べることで、味わいや食感が変化し、一皿で飽きないライブ感を味わえるんです」と千歌さん。実際にスプーンで混ぜながら食べてみるとまさにその通りで、一口ごとに味わいが変化していく。本場スリランカのシェフが作るカレーでありながら、どこか和食に通じるような親しみを感じたのも印象的だった。
カトゥレットと呼ばれるスリランカのコロッケ。ツナが入った懐かしい味。
揚げナスをマリネ液で和えたナスのモージュ。酸味、辛味、旨味のバランスが絶妙で、これだけでごはん2杯はいける。
優しい味わいのダールカレー。使用する豆は時期などによって変わるそうだが、今回はレンズ豆のようだ。
スパイスでしっかりと風味付けされたチキンカレー。ガツンとくる味わいでクセになる。
いんげんのカレー。素材の持ち味が生かされた日本人好みの味。
日本米ではなくバスマティライスを使用するなど、本場スリランカの味にこだわりながら、地元で採れた野菜などの食材を積極的に使うのも「curry YASHI」流。たとえば下の写真カレーには、かほく市の砂丘で育てられた長芋が使われている。
こちらは酸味の効いたサラダ。能登の赤玉ねぎが使われている。
甘味、塩味、酸味、辛味、苦味、渋味の六味を摂ると良いとされるのは、スリランカの伝統医療(アーユルヴェーダ)の考えによるもの。そんな話を千歌さんから聞き、食べ終わった後のなんとも言えない回復感に合点がいった。
食べれば食べるほど健康になる気がする。「curry YASHI」のライス&カリーは、毎日食べても飽きない“医食同源”のカレーなのだ。
curry YASHI(カリー ヤシ)