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今年のことは水に流そう。世界中のトイレが集まる、車の博物館に行ってみた。

新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の事態に陥った2020年。まだまだ予断を許さない状況ですが、嘆いてばかりじゃ心にシワが増えるだけ。嫌なことは水に流して、新しい年を迎えようじゃないですか。

 

そんなわけでやってきたのが小松市にある『日本自動車博物館』。車の博物館でありながら、世界各国のトイレ(便器)が集まる珍スポットです。

 

珍スポットと呼ぶには恐れ多い、レンガ造りの立派な建物。

 

クラシックカーから懐かしの大衆車まで、約500台の名車を展示している。

 

だれも退屈しない、退屈させない。

 

車の博物館なのに、どうして世界中のトイレが?

 

気になるので、博物館を運営する「石黒産業」の前田圭一さんに話を聞いてみました。

そもそも、なぜ世界各国の便器を設置するようになったんですか?

前田さん

じつは私どもの会社は普段、住宅設備機器を販売してまして。世界中の車を集めた施設を作るのであれば、商材であるトイレも国際色豊かなものにしようと思ったんです。

どれくらいの種類の便器があるんですか?

前田さん

15カ国、大小40種類以上の便器があります。

これって、実際に使えるんですよね?

前田さん

もちろんです。国によってサイズや座り心地は様々で、みなさん使った便器の感想を語り合いながら、楽しんでいるようです。

車に興味がない人でも楽しめそうですね。

前田さん

男性が車に夢中になっている間に、お連れの女性はトイレを見て回る。そんなカップルもいらっしゃいます。車好きの男性が女性を誘う口実にもなっているみたいですね。

階ごとにまとめた便器のラインナップ。男子トイレは1階が、女子トイレは3階が充実している。

 

シンプルな小便器から、芸術品まで。

 

それではさっそく、館内に設置されている世界のトイレを体験してみることに。

 

と、その前に。

 

トイレの前の看板に書かれた説明書きに妙に納得してしまったので、おすそわけ。

「住」において自動車が動の空間であるとすれば、トイレは静の空間といえるのではないでしょうか。私たちはこの世に生を受け、自動車が縁の切れない物となったのと同様に、トイレもまた唯の一日たりといえどもお世話にならない日はない物となりました。そしてそのためとかく機能的な面のみが追求されがちでした。しかし、文明文化の発展とともに、第三の空間としての関心が高まりつつあります。心身ともに安らぎ、さらに活力を生み出すことができるのもトイレであります(原文ママ)

 

たしかにトイレに入ると集中力が高まる気がしますよね。脳科学者の茂木健一郎氏も「アイデア出しの作業に、トイレの個室で座ることが効果的」って、言ってたっけ。

 

「読書はトイレで」という人の気持ちも、よくわかります。

 

それでは、男子トイレから。

 

 

左/アメリカ製
アメリカを代表する水回り製品メーカー「KOHLER」社の小便器。サッカーファンにはマンチェスター・ユナイテッドの袖スポンサーといえば分かるかも。それくらい有名なメーカーです。アメリカらしいクラシカルなデザインが特徴的。

 

右/フランス製
シンプルながらフランスらしいクセのあるデザイン。「PORCHER」というメーカーの製品のようです。余談ですが、千葉県のとあるホテルのトイレには、この小便器がずらりと並べられています。

 

 

左/ドイツ製
モダンなデザインが日本でも人気を集める、ドイツのデザイナーズバスルームブランド「DURAVIT」の小便器。コンパクトだけど、飛沫は逃さない。機能性を優先した、無駄のないフォルムがいかにもドイツらしいです。

 

右/スウェーデン製
パブリックスペースのトイレなどでよく見かけるたまご型の小便器。こちらはスウェーデンの衛生陶器メーカー「IFO」が製造したもの。北欧は背が高い人が多いけど、このデザインなら安心して用が足せるかも。

 

 

左/中国製
ニーハオトイレなど独特のトイレ文化がある中国ですが、最近は都市部を中心にその傾向は変わってきているそうです。「大量生産しました」といわんばかりのインダストリアルなデザインが特徴的。

 

右/イタリア製
中国の小便器と似たような形。お国柄は違くても、案外トイレの形は共通するもんなんですね。製造するのはベルギーに本社を置く、衛生陶器メーカー「Ideal Standard」。このモデルはイタリアの工場で生産されているんだとか。

 

 

最後に紹介するのは、用を足すときの難易度がもっとも高いベトナム製の小便器。まるで子ども向けに作られたのかと思うくらいとにかく的が小さいのが特徴ですが、よく考えると昔の日本の小便器もこれくらい小さかったんですよね。

 

材料費を削るためというのが直接的な理由だと想像しますが、便器のサイズには国の経済状況も反映されるのかと思うと、興味深いものがあります。

 

つづいては、女子トイレ。

 

 

左/オーストラリア製
ライオンがあしらわれた陶器製のトイレ。ふたと便座は木製というこだわりです。デヴィ夫人の家のトイレもこんな感じなのかな。

 

右/フランス製
「JACOB DELAFON」というメーカーの便器。なんでしょう、なんかエロいです。ちなみにフランスのトイレは基本的に便座もふたもついてないそうですが、見ての通りこの便器にはちゃんとついてました。

 

 

左/ドイツ製
高級感あふれる黒塗りの便器。汚れが目立たなそうで良いんだけど、これだと掃除するときに磨き残しがありそうで不便かも。

 

右/イタリア製
スカイブルーのおしゃれな便器。製造する「POZZI GINORI」は、高級食器メーカー「リチャード・ジノリ」と起源を同じくする、由緒正しいブランド。見た目もシンプルだし、自宅に設置するならこれかな。

 

キレイ好きな日本人のため、海外製の便器にウォシュレットを後付け。

 

実際に試してみて感じたのは、いかに日本製のトイレが使いやすいかということ。いまやウォシュレットがないと用すら足せなくなった筆者の軟弱な身体には、やっぱり日本のトイレが一番。ジャパニーズトイレの素晴らしさ再認識させてくれる一日でした。

 

 

日本自動車博物館
ニホンジドウシャハクブツカン
石川県小松市二ツ梨町一貫山40
TEL.0761-43-4343
営業時間/9:00~17:00
定休日/水曜日(12月26日〜1月6日は休業)
駐車場/200台

※こちらの情報は取材時点のものです。

 

 

(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)

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