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涅槃へGo!地獄と極楽が交錯する『ハニべ巌窟院』の彫像スペクタクル

北陸屈指の珍スポットとして全国にも名を馳せる小松市の『ハニべ巌窟院』。全長15mのドデカイ大仏に、仏教界のカリスマが鎮座する阿弥陀洞、壮絶な地獄絵巻を展開する大巌窟など見所満載。人間の喜怒哀楽を詰め込んだかのような世界観は、唯一無二の存在感を放っている。着工から半世紀以上が経った現在も建設中。そんな石川版サグラダ・ファミリアに足を運んでみた。

 

彫像の数は100体以上。

目指すは33m!大仏完成まであと何年かかるのか

現地に着くとまず目にするのが全長15mの「ハニべ釈迦牟尼大仏」。お釈迦様を再現したもので、完成すると33mの高さになるそう。ちなみに日本一大きい大仏は茨城の牛久大仏で120m。それには及ばないものの、二番目に大きい千葉県の日本寺大仏(31m)は超える計算だ。大仏の下には水子供養のお堂が建立。じつはハニべの山頂は水子の大霊地でもあるそうだ。

 

箱根の彫刻の森美術館を彷彿とさせる小径を通り過ぎ、さらに山道を登っていくと、やがて大きな巌窟が現れる。ここからが本番。いよいよ『ハニべ巌窟院』のスペクタクルが始まる。

 

ハニべ釈迦牟尼大仏

 

雨ニモマケズ。

創設者は石川県を代表する彫刻家

ちょっとその前に『ハニべ巌窟院』をおさらい。創設者は日展などで入選実績のある彫刻家、都賀田勇馬(つがたゆうま)氏。創設は1951年。元々、江戸時代に石切場として使われていた長さ150mの洞窟を利用し、戦後の世界平和を祈願して彫られた数々の仏像を安置するようになった。現在は息子であり彫刻家の都賀田伯馬(つがたはくま)氏が、2代目院主として跡を継いでいる。

 

場所は小松市中心部から山側へ車を20分ほど走らせた農村地区。ナビを使用するとなぜか入口の反対側を案内するので注意が必要。とはいっても、ある程度の距離まで近づけば大仏さんが見えるので迷うことはない。

 

閑話休題。洞窟入口に「でーん!」と構える仁王像に軽く挨拶をしたら、まずは夢牛と呼ばれる牛の彫刻に、願い事をしながら小銭を投げてみる。どうやらそれが牛の上に止まると夢が叶えられる。そんな言い伝えがあるそうだ。

 

大巌窟の入口。

 

夢牛の彫刻。

 

その先には釈迦の誕生を表現した釈迦一代記、不動明王像や阿弥陀如来などの仏像が鎮座。さらに奥に進むと、今度はインド古代彫刻館として、ヤクシニー像やアショーカ像などが安置されている。

 

ところでこの彫像。ひとつひとつよく見ると、表情が豊かで官能的。とかく珍スポットとしての印象を抱きがちだが、じつは高尚な作品を堪能できる場所でもあるのだ。

 

洞窟内の様子。

 

阿修羅像。

思わず真顔になる、阿鼻叫喚の地獄絵図

洞窟内は外の気温より3〜4度は低い印象。灯りも薄暗く、いつなにが出てもおかしくないような不気味な雰囲気が漂っている。そこで登場するのが本日のメインイベント「地獄めぐり」である。

 

トゲのついた車輪で人間を轢いて苦しめる「轢逃げの罪」にはじまり、食物を粗末にする罪、血の池地獄、人をたぶらかした罪など、おどろおどろしい光景のオンパレード。なかでも鬼たちが人間の肉や血で酒盛りする「鬼の食卓」は圧巻。メニューは目玉の串刺し、耳と舌の甘煮、面皮の青づけ、人血酒の4種類。食卓の横にはコック姿の鬼が調理をするなど、細かい部分もリアルに再現されている。

 

地獄へようこそ。

 

鬼の食卓。

 

見上げるほどに大きい閻魔大王の表情も迫力満点。死者の生前の罪を裁く王としての威圧感が抜群。これが大人の自分でも真顔になるくらいの怖さ。子供のときならパニックになっていたかもしれない。それくらいの勢いで阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられていた。

 

閻魔大王。

 

もうひとつの洞窟、阿弥陀洞。ここには空海や日蓮などの坐像が鎮座するほか、願皿という素焼きの皿(ハニべ焼)に願い事を書いて、聖函と呼ばれる箱に投げ入れるイベントも用意されている。2枚で100円。一人で2枚書いても願い事がふたつ叶うのかしら?

 

そのほかにも自然公園に横たわる全長6mの涅槃像など、敷地内には個性豊かな彫像が100体以上。季節はすでに芸術の秋。石川県を代表する彫刻家親子の美意識に触れながら、幽玄な世界を存分に楽しんでみて欲しい。

 

青い箱を狙う。

 

ハニべ巌窟院
ハニベガンクツイン
石川県小松市立明寺町イ1
TEL.0761-47-3188
営業時間/9:00~17:00(10月〜3月は16:00まで)
定休日/無休
拝観料/大人800円、小人500円(小学生無料)
駐車場/あり

※こちらの情報は取材時のものです。

 

(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)

 

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