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本格焼酎バー「笑酎道楽」の店主がセレクトする最高の焼酎5選

こんにちは、飲助ライターのヨシヲカです。

 

じつは最近、糖質制限をはじめたのをきっかけに「焼酎」を飲む機会が増えたのですが、いかんせん日本酒造りが盛んな石川県に住んでいるせいか焼酎の知識がほとんどなく、充実した晩酌ライフを送っているとは言えない状況に陥ってしまいました。宅飲みするにもなにを買えば良いのか分からず、お店に行っても注文するのは聞き覚えのある銘柄ばかり。これって絶対に人生損していますよね。

 

というわけで、今回のテーマは「焼酎」。全国に数ある焼酎の中から自分好みの味を探すべく、金沢片町の焼酎バー『笑酎道楽』を訪ねてみました。

全国津々浦々の焼酎が大集結!

 

『笑酎道楽』は、石川県でも数少ない焼酎専門のバー。焼酎の本場である鹿児島や宮崎の焼酎を中心に、全国各地の焼酎を取り揃えています。

 

その数なんと400種類以上!

 

しかもラインナップがかなり尖っていて、限定生産された希少な焼酎から珍しい原料を使った変わり種まで、普段なかなかお目にかかれない代物ばかり。いくらプレミアがついている人気酒でも、焼酎狂のマスターが納得しなければメニューにすら載せないこだわりで、全国の焼酎マニアから熱い支持を受けているんです。そんなお店が石川県にあったなんて、まだまだ勉強不足ですね。

 

 

場所は「片町きらら」の裏手にある味ビルの一階。新天地商店街の入り口近くといえば分かりやすいでしょうか。なんにせよ、ハシゴするにはもってこいの立地です。

 

 

こちらがマスターの西本剛さん。焼酎の魅力に取り憑かれたのは、エンジニアとして大手自動車メーカーに勤務していた時代。もともとは日本酒派でしたが、会社の同僚の勧めで焼酎にも口をつけるようになると、いつのまにか焼酎派に。ついには毎月のように本場九州に足を運んでは、焼酎の蔵元を巡るようになります。

 

地元金沢で『笑酎道楽』を開いた後も、その情熱は衰えるどころか増すばかり。昨年と一昨年に至っては、全国37都道府県を股にかけて焼酎蔵を行脚したそうです。すなわち焼酎の知識は折り紙付。

 

今宵は西本さんがセレクトした焼酎を味わいながら、たっぷりとご教授いただきましょう。

それでは、飲み比べスタート!

鏡州 GINGER(落合酒造場・宮崎) 650円

まずは1杯目から。西本さん、お願いしま〜す。

西本さん

では「鏡州 GINGER」のソーダ割りからいってみますか。

GINGERって「生姜」のことですよね?

西本さん

そうですね。基本的に焼酎は、前半に米麹、後半に芋や麦を入れる二段仕込みで造られることが多いのですが、この焼酎はその後に生姜を加える三段仕込みで造られています。ソーダで割ると生姜の風味が際立って、より爽やかに楽しめるんですよ。

うん、たしかに喉越しがドライで、すごく飲みやすいです。生姜の香りもキツすぎないし、大人のジンジャーエールって感じですね。

西本さん

でしょ?いい具合に助走がつくので、乾杯焼酎として飲まれる方も多いんですよ。

それにしても生姜を原料にした焼酎があるなんて驚きです。

西本さん

製造元の落合酒造場で杜氏兼代表を務める落合さんの酒造りにかける情熱は人一倍。クラフトマンシップにもあふれていて、蔵を訪れるたびに感銘を受けています。ほかにもピーマンやカボチャを原料にした焼酎がありますね。

三岳 屋久島限定(三岳酒造・鹿児島) 750円

西本さん

お次は「三岳」にしましょうか。

あっ、聞いたことあります!たしか屋久島で造られているんですよね。

西本さん

そうですね。一時は入手困難なプレミア焼酎として名を馳せた「三岳」ですが、こちらはその中でも屋久島でしか販売されていない限定焼酎になります。

ほかの「三岳」と何が違うんですか?

西本さん

原料の芋ですね。通常の「三岳」は、黄金千貫という品種のさつま芋が使われているのですが、こちらは屋久島産の白豊という、実も皮も真っ白なさつま芋が原料となっています。

やっぱり芋が変わると味も変わるんですか?

西本さん

魚でいうとノドグロとブリくらい違いますね。もっといえば同じ品種の芋でも、栽培された場所によって味は変わります。ちなみに屋久島で作られた芋はあっさりした味になると言われていて、この焼酎も口当たりがなめらかで飲みやすい部類に入るかと思います。

たしかに飲みやすい!芋臭さも少なくて、フルーティーですね。これなら芋焼酎が苦手な人でも楽しめそう。

西本さん

夏場なんかはこれを水割りにして、風呂上がりにグーっと飲むと最高ですよ。

正直、焼酎はロックが通の飲み方だと思ってたんですけど、西本さんのお話を聞いているとソーダ割りとか水割りで飲むのもアリなんですね。

西本さん

焼酎に決まった飲み方はありません。そもそも九州ではお湯割で飲むのが基本ですからね。私だって食事中は水割りで飲みますし、それぞれが好きなように飲むのが一番なんです。

なんだかちょっとホッとしました。

西本さん

もし、焼酎そのものの味を堪能するのであれば、ロックではなく「生(き)」で飲んでみてください。いわゆるストレート。少量ずつ口に含んでいくと、芋や麹の香りが口の中に広がって、焼酎本来の味が楽しめますよ。

アートコレクターとしての顔も持つ西本さん。一客10万円以上する薩摩切子をはじめ、輪島塗やガラス工芸など酒器にもこだわりを見せる。

 

こちらは西本さんのお母さんが手作りした車麩の卵とじと真子の煮付け。「空酒は胃に響くからダメよ」というお母さんの気遣いと、出汁のやさしい味わいが身に沁みる。

 

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珠洲かぼちゃいも焼酎 熟成貯蔵芋(落合酒造場・宮崎) 850円

こちらはどんな焼酎ですか?

西本さん

石川県珠洲市に伝わる「かぼちゃ芋」を原料にした焼酎です。どうしてもこの芋を焼酎にしたくて、落合さんにお願いして造ってもらったんですよ。

えっ!西本さんって焼酎も造っているんですか?

西本さん

石川県の人たちに焼酎の魅力を伝える良い機会だと思ったんです。芋自体の香りにクセがなく上品なので、美味しい芋焼酎が作れそうでしたからね。

西本さん

いくつか種類があるのですが、黒麹と熟成貯蔵芋で仕込んだバージョンを飲んでいただきましょうか。

おっ!さっきのふたつと比べると、しっかり芋の香りがしますね。これはお湯割りで飲んでも美味しいかも。

西本さん

私たちが最初に目指したのは、日本酒のように柔らかく、香りが高く、キレのある焼酎を完成させること。これは石川の食文化とマッチさせるには必須条件でした。

ふむふむ。

西本さん

ただ、真の焼酎好きからすると物足りなさもあったようで、これまで作った焼酎の良さを残しながら、芋焼酎特有の重みと香りの強さをプラスさせたのが、この熟成貯蔵芋バージョンなんです。

たしかに、力強さを感じますね。

西本さん

アルコール度数も30度と強め。普段から焼酎を召し上がっている方にも、きっと満足していただけると思います。

日南娘 ホワイトリカー(宮田本店・宮崎) 850円

えっと次は何杯目だっけ?ちょっぴり酔いが回ってきたかも。

西本さん

まぁまぁ、和らぎ水でも飲みながらのんびりいきましょう。

ありがとうございます。(ぐびぐび)

西本さん

それでは4杯目。「日南娘」のホワイトリカーはいかがでしょうか?

えっと日南ということは、宮崎の日南市と関係あるのかな?

西本さん

ご名答です。こちらは宮崎県日南市の宮田本店という、小さな蔵元で作られている焼酎になります。

ホワイトリカーってよくある果実酒を漬けるやつですよね。飲んでも大丈夫なんですか?

西本さん

もちろんです。

西本さん

日南娘自体が手に入りにくい焼酎なのですが、なかでもホワイトリカーは年間30本と超少量生産で、地元でも滅多にお目にかかれない代物となっています。アルコール度数が35度と高濃度の割には日南娘らしい柔らかさも感じる、非常に出来の良い焼酎ですね。

う〜ん、美味しい!ゴクゴク飲めるタイプじゃないけど、なんというか黒糖みたいなコクがあって、味に奥深さを感じます。

西本さん

それはきっと甕(かめ)の風味ですね。焼酎には色々な貯蔵方法がありますが、宮田本店では和甕が使われています。和甕で寝かせると独特の風味が出るだけでなく、小さな気孔から焼酎が呼吸をして熟成が進み、まろやかさも生まれると言われているんですよ。

これは今まで飲んだ中で一番美味しいかも。

西本さん

好き嫌いが分かれる焼酎ですが、この味が好きな方は焼酎にハマる素質がありますよ。

そういえば父親のルーツが九州でした。もしかすると血なのかも。

西本さん

間違いないですね(笑)。

波花 バンザイストロング(ハワイアン焼酎カンパニー・ハワイ)

西本さん

最後はハワイ生まれの焼酎「波花」をどうぞ。

ハワイの焼酎ですか!

西本さん

「波花」は、ハワイに移住した平田さんご夫婦が手造りしている芋焼酎。鹿児島に伝わる黒瀬杜氏の伝統的な技法で造られるため生産量も少なく、とくにこちらのバンザイストロングに関しては入手が極めて困難な品になっています。

へぇ〜。

西本さん

あいにくこのコロナ禍でハワイまで仕入れに行くことができず、今お店にあるのはこの一本だけ。残りが少ないのでしずく程度になってしまいますが、ぜひ「生」で召し上がってみてください。

く〜っ!ガツンときますね。

西本さん

バンザイストロングは原酒でアルコール度数が42.6度。ハワイ産という物珍しさにとらわれがちですが、紫芋特有のフルーティーな香りで、常連の焼酎マニアも絶賛する味となっています。

それにしてもなぜハワイなんですか?

西本さん

なんでもご主人が子どもの時に現地で食べたタロイモ料理を思い出して「もしかしてハワイでも美味しい芋焼酎が造れるかも」って思ったそうですよ。

それが今では伝説的な焼酎として語り継がれているなんて。ロマンを感じますね。

西本さん

こうして話をしていると私も久しぶりに飲みたくなってきました。近いうちにノースショアにある蔵まで足を運んでみましょうかね。

西本さんが焼酎をセレクトする基準はただひとつ。それは杜氏の気持ちが入っている酒であるか否か。自他共に認める焼酎狂として、造り手の思いを伝えることに意義を感じている。

 

もっといろんな焼酎を飲みたかったけど、だいぶ酔いが回ったので今日はここまで。値段も手頃なので近いうちにまた飲みに来ようと思います。あぁ日南娘、美味しかったなぁ〜。

 

 

笑酎道楽(ショウチュウドウラク)
住所/石川県金沢市片町2-3-2味ビル
TEL. 080-1967-8282
営業時間/19:00頃〜24:00頃
定休日/日曜日
席数/カウンター席6席、座敷10席
駐車場/近隣にコインパーキングあり
※こちらの情報は取材時点のものです。

 

 

(撮影/林 賢一郎)

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