りんごの違いって知ってる?野菜ソムリエに〈秋星・つがる・ふじ〉の特徴を聞いた
最近、スーパーでよく目にするりんご。産地や品種が札に書かれているけど、じつはあんまり違いが分かってなかったりする。「りんごが赤くなると医者が青くなる」なんて言われるくらい身体に良いものだし、ちゃんと知っておいた方がいいかも。というわけで、昭和元年創業の老舗八百屋『なかまさ』の女将、野菜ソムリエとして活躍する中野耀子さんのもとを訪れた。
加賀市の山中温泉にある『なかまさ』。野菜ソムリエの女将が、加賀野菜の魅力や美味しい食べ方などを教えてくれる。
甘さ、酸味、食感。食べ比べると違いが歴然
日本国内で栽培されるりんごの種類は2,000以上。基本的には青森や長野など年間の平均気温が6〜14℃の寒い地域が栽培に適しているそうで、石川県はりんごの産地の中でも南側に位置している。そんな苦しい立場の中、2005年に突如現れたのが石川県のオリジナル品種「秋星」。今回はその秋星をはじめ、石川県で収穫されるおもなりんごの特徴を聞いてみた。
季節によって3〜5種類のりんごが並ぶ。
秋星・ふじ・つがるの特徴と違いは?
1.秋星
金沢出身の小説家、徳田秋声にちなんで名付けられた「秋星」は、石川県が育成した新品種。りんごは成熟期の気温が高いと着色しにくいとされているが、この品種は石川県の気候でも無袋栽培できれいに着色する。毎年10月上旬から数週間の間、期間限定で出荷が行われる。
「大玉で手にするとずっしり。鮮やかな赤色で店頭に並べると本当にきれい。サクサクとした歯ざわりで、甘みと酸味のバランスにも優れているので、飽きずに食べることができるんです」と中野さん。スイーツやサイダー、バターなど県内では「秋星」を使った商品も多く開発されている。
真っ赤に輝いた「秋星」。ふっくらとしたフォルムが印象的。
甘さと酸味のバランスが秀逸。シャクっとした歯ざわりも心地よい。
2.ふじ
11月上旬から収穫される晩生種の「ふじ」。一般的なふじは収穫後に鮮度を保つ専用の冷蔵庫に入れられ、他の品種が少なくなる春から夏にかけてりんご売り場の主役になる。無袋で日光をたくさん浴びて育ったものは「サンふじ」と呼ばれる。
「日本で一番生産されているりんごだけあって人気も実力も文句なしです。りんごの王様という名前に相応しい万人受けする味わいで、どちらかというと酸味よりも甘さが際立っている印象です。シャキシャキした食感も心地よいですね」。
太陽の光をたくさん浴びて育った「サンふじ」
蜜の入りやすい品種の代表格としても知られている。
3.つがる
8月中旬から収穫される早生種。昔から八百屋に並ぶのは「つがる」からとも言われる。ふじに次いで2番目に生産量の多い品種で、芳明つがる、つがる姫、みすずつがるなど、さまざまな種類に分類される。
「昔懐かしい優しい甘みのある品種です。果肉がギュッと詰まっていて、ジューシーな味わいが楽しめます」。
つがるとふじを交配したシナノスイート。
果汁が多くて、歯ごたえ良し。 甘味たっぷりで、酸味は少な目。
医者も逃げる、驚くべきりんごの栄養素
味の違いが分かったので、今度はりんごそのものについて聞いてみる。
「欧米には〈一日に一個のりんごは医者を遠ざける〉ということわざがあります。それくらいりんごは身体に良い食べもの。コレステロールを抑えたり便秘を改善するカリウムや、胃酸のバランスを整えるペクチン、抗酸化作用やアンチエイジングに効果のあるポリフェノールを豊富に含んでいて、生活習慣病や高血圧予防などに効果があると言われています」。
「海水浴には必ずりんごを持っていったの」と昔を振り返る中野さん。
『なかまさ』といえば、新鮮な野菜や果物を使った生ジュースが有名。先ほどの理由から中野さんが作る生ジュースはりんごがベースになっている。
「新鮮な野菜やフルーツには、酵素やビタミン、ミネラルだったり、たくさんの生きた成分が含まれているます。生ジュースは栄養素を消化器官に負担をかけることなく、ストレートに血液へと吸収してくれる魔法のドリンクなんです」と中野さん。使用するりんごは季節によって変わるので、そのつどほかの果物で味を調整しているそうだ。
果物の栄養素や酵素を損ないにくいスロージューサーを使用。500円〜。
最後に美味しいりんごを選ぶコツを聞いてみると「お尻を見ると簡単。しっかり赤色やオレンジになっているものを選んでください。緑色だと未熟な証拠。甘さも食感もイマイチです。あと、すぐに食べないときはビニール袋に入れて、野菜室で保存してください。野菜も果物も湿度を保つのが大事。ひとつずつ新聞紙にくるんでビニール袋に入れると、温度調整の役割もかねてもっと美味しさが長持ちします」とのご回答。さすが野菜ソムリエ、なんでも知っています!
なかまさ
石川県加賀市山中温泉南町76-3
TEL.0761-78-1112
営業時間/9:00~18:00(日曜のみ〜15:00)
定休日/水曜日(年始は5日から営業)
駐車場/3台
※こちらの情報は取材時のものです。
(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)