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爆裂地方都市⑰|あだ名弾圧!カツ丼禁止令事件

僕らのローカルシティポップ【爆裂地方都市】
爆裂地方都市・金沢の地から、ホコリにまみれた名曲から知られざる新曲までを掘り起こす!石引のカレーマスター・モカさんがカレーの合間にしたためた〈俺だけのディスカバリー〉がここに。

 

僕は友人知人から「モカ」というあだ名で長年呼ばれていまして、由来は苗字と名前=ファミリーネームとファーストネームの頭文字を略したもの。「キムタク」「マツケン」を「キタ」「マケ」とさらに凝縮した、みたいな感じです。

 

もうすっかり「モカ」が浸透してしまって僕の本名を知ってる人はほとんどいなく、フルネームと年齢がルールの新聞でも「モカさん」と表記されたことがあります。ちなみに小学校3年から高校卒業までは「モッカ」と呼ばれていました。

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さて​​、最近の小学校は「あだ名禁止」で、男子も女子も「さん」付けで呼び合うという指導が物議を醸しているようです。

ニュース:「あだ名禁止」「さん付け奨励」、小学校で増加、子育て世代の思いは?

 

あだ名禁止派の理由は「あだ名は身体的な特徴やコンプレックス、家庭環境に由来することが多いのでイジメや差別の温床になるから」と。キテレツ大百科のブタゴリラも、これから再放送するときは本名が熊田 薫なので「熊田さん」に変わってるかもしれません。

 

あだ名といえば、僕が小学校5年生のとき、担任の先生がクラスメイトの「かつとし君」のあだ名が「かつどん」であることを知って「親から頂いたかつとしという大切な名前を、カツ丼とは何ごとかーっ!!!!!!!!!」とブチ切れたことで、僕らのクラスだけあだ名禁止令が発令。男女ともに「さん」付けが徹底されました。担任は当時40歳くらいの男性教諭で、今思えば右翼思想。キレたら三島由紀夫最期の叫びのような口調で急に大声で怒鳴るので、そうなるとクラスメイト全員下を向いて機嫌が収まるのを待つしかありません。本人は自覚的か分からないけど、ブチ切れ終わったらとても優しい口調になるという典型的な洗脳の手段…!

 

男子も女子も悪意なく親しみを込めて「かつどん」と呼んでいたし、かつとし君も不満そうなそぶりはなかったのに、こんな状況になったかつとし君は「俺のあだ名のせいで、みんなのあだ名が禁止になった…」と罪悪感の十字架を背負いしばらく塞ぎ込んで、その負のオーラが「かつどん」と呼んでいたクラスメイトたちにも連鎖し、教室はどんよりムードに。そして、さっきまであだ名で呼び合っていたのに、あだ名じゃなくても女子は男子のことを〇〇君と呼んでいたのに「さん」付けで呼ぶ違和感と呼ばれる違和感。

 

SAVE THE あだ名派は「こんなの絶対におかしい!納得いかない!ナンセンス!」という思いを共有しているものの、まだ幼く担任に直訴して説得させる能力と言葉を持ち合わせていないし、再び三島由紀夫最期の叫びを見舞われるのも恐怖な一部の生徒たちは「担任に内緒でこっそりとあだ名で呼び合う」というレジスタンスを始めます。自然に呼び合ってたあだ名が禁断の背徳ワードに!これはなかなか燃えました。

 

ロックやジャズのレコードを聞いたり売ったりすることが禁止されていた冷戦時代の旧ソビエト連邦では、アメリカの音楽を使用済みのレントゲン写真のフィルムに音楽を焼き付けて密輸するという「ボーン・レコード」を発明してこっそり流通させていたそうですが、僕らも「ボーンあだ名」状態で呼び合っていました。

 

しかし、あだ名禁止令発令後に多数派だったのは「担任がダメと言ったからダメ、決まったことは守る担任派」の「あだ名保守党」。さらにあだ名で呼び合っているクラスメイトに厳重注意して、治安を守る「あだ名自警団」も結成された挙句、レジンスタンスにこっそり紛れ込んであだ名で呼び合ってる生徒を担任に密告して仲間を売り粛清する「あだ名KGB」まで暗躍。追い詰められたレジスタンスは、連合赤軍あさま山荘事件状態となり絶滅。

 

5年4組というクラスを国家としたら、理不尽な法案も鵜呑みにして守る国民、反対運動をする国民、国に変わって自主的に反対運動を処罰する国民、味方のフリをして反対派を陥れ権力から褒美を欲しがる国民、とまるで現代の我が国のようでもあります。ちなみに担任の先生は、最初の自己紹介のときに「せいちゃんと呼んでください!」と言ってました…!

 

心配事を丁寧に摘み取らずに全部禁止にする「木を見て森を見ず」の逆バージョンというか、1本の木のために森を全部燃やすようなことをやってて、本当に子どもたちの心の平和や成長に良いんでしょうか。

 

先日も重い重いランドセルを体感で9割軽く運べる「さんぽセル」という革命的なグッズを開発した小学生が大人たちから「楽をするな!」と大批判されたニュースがありました。

ニュース:「楽したらいかん!」と大人から批判「さんぽセル」開発の小学生が「売れなくてもいい」と語った理由

 

これも、発明した方も批判した方も「ランドセルは絶対」という前提があります。小学生はなぜ重いランドセルじゃなきゃダメなのか?軽いリュックサックにしませんか?という議論にはなりません。

 

髪の毛が生まれつき茶色いのに学校から黒く染めるように強要され不登校になったことを訴えた大阪の女子高生も「頭髪指導は違法ではないと判断した」という最高裁判決が確定しました。これも異常中の異常。ブロンドヘアーのアングロサクソン人や生まれつき白髪のアルビノの方も、黒くしなきゃいけないんでしょうか。

ニュース:大阪府立高校の頭髪指導“違法とは言えない”判決確定 最高裁

 

とにかくこれだけ多様性の時代に、人と違うことを徹底的に排除して、人と違うことを極端に恐れるように仕向けている制度。「何とかならんかな〜」と思ったけど、もうそれは江戸時代の村の掟みたいな和を乱すものは葬式と火事以外は無視という「村八分」システムが、現在でもずーっと続いてるんだろうから無理かな…。

 

ぎり昭和育ちの僕にとって、あだ名といえば「太陽に吠えろ」の刑事。

ジーパン(松田優作)、テキサス(勝野 洋)、マカロニ(萩原健一)、DJ(西山浩司)、ラガー(渡辺 徹)、ジプシー(三田村邦彦)、ロッキー(木之元 亮)、そしてスコッチ(沖 雅也)…

やっぱりあだ名って嫌いになれません。

 

「​​Call Me By Nickname」略して #CMBN 運動をしましょう!

 

【本日の一曲】スコッチ「君はナチュラル」(太陽に吠えろのスコッチとは別人)

 

 

 

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執筆者プロフィール

モカ
学生街のブラッスリー『JO-HOUSE 石引』2代目カレーマスター/私設公民館『じょーの箱』大家さん。もうすぐ若者ぶらずにおっさんの武器も使えるいちばん旬なとき、さみしさは昔よりも現実味おびてきたね…でも明日はくるSweet Sweet 45 Blues。

ツイッター:@MoCurry
フェイスブック:@モカ ジョーハウス
インスタグラム:@Jo_house1972 @mocurry

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