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インクルーシヴな社会とは?後編|DJ TOSHIKIのオトノイロ #18

「聴こえる」と「聴こえない」の垣根をエンターテインメントで結びたい!スポーツDJとして活躍するDJ TOSHIKIが、聴覚障害者への理解を深め、インクルーシブな社会実現を目指します。

 

前回のコラムでは、あらためて今自分が考える“インクルーシヴ”について書きました。今回はそんな”インクルーシヴな社会”を実現するためにどんな事をしているのか、自分たちの団体「NEIRO」の活動とともに書いていきたいと思います。

 

前回でも少し書きましたが、自分たちは福祉という観点では活動を行っておらず、自分たちが得意な事、具体的には“音楽・スポーツ・遊び”といったエンタメに関わる活動をメインとしています。

 

そのひとつが「ふるえるスポーツ観戦プロジェクト」というスポーツ観戦に関わるプロジェクト。これまで10年以上にわたってスポーツシーンでDJをしてきましたが、とくにバスケットボールの日本プロリーグ“Bリーグ”では、毎シーズン30試合近くDJをさせていただいています。

 

バスケットボールの試合会場では試合中にBGMが流れるのがスタンダード。リズムに合わせて手拍子やメガホンなどを鳴らす応援が、観戦のひとつの楽しみ方になっているんです。

 

 

「ふるえるスポーツ観戦プロジェクト」では、音を光と振動に変換するデバイス“Ontenna”を使って「会場のリズムを光と振動で直感的に伝える事で、聞こえない・聞こえづらい方にBGMのリズムを感じてもらう」という取り組みを行なっています。それによって周りの人の手拍子に合わせるのではなく、自分で音楽をとらえ会場の一体感をより感じられるサポートをしています。

 

またトライアルを重ねていく中で「試合の状況がリアルタイムで分かるともっと楽しめそう」という意見をもらい、“聞こえない人と聞こえる人が一緒に応援を楽しめるスポーツ会場”を目指し、現在は審判のホイッスルや会場MCのアナウンスの視覚化にも取り組んでいます。

 

 

そしてもうひとつは、新しい音楽の楽しみ方を提案するプロジェクト「光と振動をつかった新しいDJ体験」です。こちらは最新のDJソフトやデジタル機器のシステムと“Ontenna”を使って、DJがプレイする音楽を振動とライティングで表現するというもので、現在は歌詞をリアルタイムで可視化することにも取り組んでいます。

 

“もっと音楽をいろんな人にいろんなかたちで楽しんでほしい”

 

リズムを楽しんだり踊ったり、歌詞をじっくり聴いて浸ってみたり、または自分で演奏してみたりと、音楽にはいろんな楽しみ方があると思うんです。聞こえなくても踊ったり、見えなくても演奏することは出来ます。とくにテクノロジーが進化している今は楽しみ方は無限大です。

 

 

 

自分たちが進めるプロジェクトは“楽しい時間を共有できる場所をつくる”という事が前提になっています。楽しい時間を共有し、一体感を得る事で、どんな人とでも共通点を見つけて分かり合える、理解し合えるきっかけになると思っています。

 

 

難聴児でもある僕の娘が通う保育園で、以前こんな出来事がありました。

 

うちの娘がどこで何をして遊ぼうか迷っていると、その様子を見たひとりの子が手話で「どうしたの?あっちで一緒に遊ぼう」と誘いに来る。保育園ではとくに耳の聴こえる子供たちに手話を教えているわけではないはずだけど、おそらくその子は先生が僕の娘にしている手話を見て、覚えていたんでしょう。保育園で長い時間を過ごす中で「〇〇ちゃんは声でのお話しが難しいけど、こうして伝えれば一緒に遊べるんだ」と、自然に理解していたんだと思います。

 

そこで「子供って凄い!」と感じたと同時に、楽しい時間を共有する事がいかに大切なのか教えてもらいました。

 

 

自分たちのプロジェクトでも、未来の「インクルーシヴな社会」を実現するために、壁をつくらず自然と人とふれ合える、そして分かり合えるきっかけとなるような「楽しい時間を共有できる場所」を作っていきたい。そして、「新しくて、面白くて、かっこいい」。そんな遊びをたくさん届けていきたいと思っています。

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