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つながれ友達の輪!私のマスターピース②|ミュージシャンOYACHI の場合

映画、音楽、本、漫画、はたまたお気に入りのグッズなど。それぞれの心をえぐった「自分的最高傑作」をピックアップして紹介していくリレー企画。今回は、金沢を拠点に活動するラップデュオYOCO ORGANのMC、OYACHI MASATOさんにバトンタッチ。

 

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Bob Marley & The Wailers「One Drop」

 

Bob Marley & The Wailers アルバム「Survival」1979年に収録されている「One Drop」。

 

一聴するといかにもレゲエらしい陽気な雰囲気、カフェのBGMにも映えそうな聴きやすい曲です。しかしその歌詞の内容は「まだ俺達は戦わないといけない」という、強く、重いものです。

 

この曲との出会いは中学1年。洋楽かぶれを気取っていた私は、神秘的なルックスの「Bob Marley」そして「レゲエ」に出会います。とりあえずラスタカラーのジャケットを何枚か買い込み、その和訳から「JAH?」「ラスタ?」「ガンジャ?」と、数千キロ離れた南国ジャマイカへの思いを募らせていました。

 

当時の私は精神的に辛い時期で、両親の関係が崩れ、学校への興味を失い、大人や社会に対して強い敵意と絶望を感じていました。勉強しても何の意味があるか分からないし、先生は価値観を押し付ける。15の夜バイクを盗んで暗い闇のとばりの中へ行く寸前でした。

 

そんな私は、この曲で歌われる「システムへの抵抗」「悲しみ」「強い意志」そして「闘い」に自分の環境を照らし合わせ、単なる音楽を超えた特別なつながりを感じました。しかも、楽しげなリズムで表現するなんて。

 

レゲエに強く興味を抱いた私は、中学2年の夏、千里浜で開催された野外レゲエフェス「ジャパンスプラッシュ」にひとりで行くことにしました。人生初のコンサートです。

 

その前夜、両親がまた大げんかしました。原因はもうどうでもよくて、悲しくて、悔しくて、翌日逃げるように電車に乗り込み、宝達志水駅まで向かいました。会場に到着し、目の前の海岸に広がったあの景色、私は一生忘れることはないと思います。

 

ちょっと悪そうな大人たちが思い思いに身体を揺らし、お酒を飲んで陽気に騒いでいる。ちょっと怖い。でもみんな楽しそう、そしてやさしい。知らないひとに勧められてビールを飲みました(時効 苦かった笑)。焼きそばも奢ってもらいました。悲しくて、悔しくて、毎日に絶望していた私を、その爆音とリズム、喧騒が許してくれているようでした。そしてなぜか周りの大人も、耐えている現実から今は少し解放されている、そんな風に見えました。

 

私の音楽の原体験。毎日の生活で抑圧された「何か」から解放される。辛いことがあっても負けない、強い意志をもって闘い続ける。もちろんそれは暴力とかじゃない。なんて素晴らしいんだ!Feel it in the one drop! Playing a riddim!

 

それからどっぷりと音楽三昧になり、レゲエミュージックの背景やカルチャーにハマりました。その後、ヒップホップに巡り会い、DJやラップを始め、YOCO ORGANが生まれるわけです。

 

この「One Drop」という曲は、当時の気持ちとセットで私の心に記憶されています。聴くと涙が出ます。あの時の蒼さや悔しさがレイヤーとして覆いかぶさってきます。今回この曲を紹介するにあたって、私なりに和訳し直しました。完全に意訳ですが、私にとってあらためて大切な曲になりました。何度も聴いている曲って、もっと何度も、染み込むまで聴けばいい、そんな風に思いました。

 

One Drop – Bob Marley 

Oo-oo-ooh, yea-ah. Wo-yoy! Wo-yoy! Wo-yoy! Wo-yoy-yoy-yoy!
Feel it in the one drop
And we’ll still find time to rap
We’re makin’ the one stop
The generation gap
Now feel this drumbeat
As it beats within
Playin’ a riddim
Resisting against the system, ooh-wee!

I know Jah’s never let us down
Pull your rights from wrong
(I know Jah would never let us down)
Oh, no! Oh, no! Oh, no!
They made their world so hard (so hard):
Every day we got to keep on fighting (fighting)
They made their world so hard (so hard)
Every day the people are dyin’ (dying), yeah!
(It dread, dread) For hunger (dread, dread) and starvation
(dread, dread, dread, dread)
Lamentation (dread dread)
But read it in Revelation (dread, dread, dread, dread)
You’ll find your redemption
And then you give us the teachings of His Majesty
For we no want no devil philosophy
A you fe give us the teachings of His Majesty
A we no want no devil philosophy

Feel it in the one drop
And we still find time to rap
We’re making the one stop
And we filling the gap
So feel this drumbeat
As it beats within
Playing a riddim, uh!
Fighting against ism and skism

Singing: I know Jah’s never let us down
Pull your rights from wrong
I know Jah’s never let us down
Oh, no! Oh, no! Oh, no!
They made their world so hard
Every day (we got to keep on fighting), every day
They made their world so hard
Every day (the people are dying), eh!
(dread, dread, it dread, dread) Oh, whoa! Make dem a-go on so
(dread, dread, it dread on dread) Ah, whoa!
(dread, dread) I’ll walk (it dread, dread)
Ah, whoa! Frighten dem, ah whoa!
(dread, dread) Ah, whoa! Frighten dem, eh!
Give us the teachings of His Majesty – with a stick-up!
We no want no devil philosophy. Can you hear?
Give us the teachings of His Majesty
For we no want no devil philosophy

We feel it in the one drop; you’re lucky!
For we still got time to rap
And we’re making the one stop
Let me tell ya: this generation gap.
So feel this drumbeat
I tell you what: it’s beating within
Feel you heart playing a riddim –

 

—–

 

ワンドロップを感じて
俺達にはまだ時間がある
ジェネレーションギャップが
俺達を分断させる
ドラムビートを感じて
魂の奥から響き渡る
システムへ抵抗せよ
さぁこのリズムが聞こえるか?

Jah(神様)は俺たちをがっかりさせない
過ちからやるべきことを導いてくれる

奴らは世の中を
ますます厳しいものにしていく
来る日も来る日も
俺達は闘わなければならない
奴らは世の中を
どんどん辛いものにしていく
毎日たくさんの人が死んでゆく
Dreadは飢餓に苦しんだ
Dreadは悲嘆にくれる
Dreadよ
啓示を読むがいい
必ず救いは見いだせる

お前たちは
偽神の教えを説くけど
俺達は汚れた哲学に用はない
お前たちは
嘘の考えを押し付けるが
俺たちは自分で考えられる

ワンドロップを感じて
俺達にはまだ時間がある
ジェネレーションギャップが
俺達を分断させる
ドラムビートを感じて
魂の奥から響き渡る
システムへの抵抗せよ
さぁこのリズムが聞こえるか?

 

次につなぐのは、石川県を拠点に活動する俳優「星能 豊」。

佇まいの良い、綺麗な目をした男です。

 

 

今回の執筆者

OYACHI MASATO (YOCO ORGAN)

金沢を拠点に活動するラップデュオYOCO ORGANのMC。録音やミックス作業、ミュージックビデオ監督、撮影編集も手がける。専門学校講師。イベント企画や制作など「まずやってみる」精神でずっとぐるぐるしていたい。

Instagram:@yocoorgan_0081_oyachi
HP:YOCO ORGANオフィシャルHP

 

○つながれ友達の輪!私のマスターピース

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