つながれ友達の輪!私のマスターピース⑫|フォトグラファー・井上ユミコの場合
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石川県のみなさんはじめまして。
ダンサーに魅了されたフォトグラファー、井上ユミコと申します。
わたしは仕事やプライベートで国内外の素晴らしいダンサーを撮影させてもらいながら、ついには自らダンスウェブマガジン「Alexandre(アレクサンドル)」を立ち上げ、自分の好きなもの、好きな人たちと全力で戯れていたいという夢の未来を切り拓いているところです。
そんなわたしの心をえぐった「最高傑作」を披露するということで、今回は、迷いなくこちらのバレエ作品を紹介したいと思います。
『ニジンスキー』ハンブルグバレエ団
振付 ジョン・ノイマイヤー、主演 アレクサンドル・リアブコ
©︎Kiran West
もしかしたら、バレエといえば「お姫さまと白タイツの王子さま」「メルヘンでファンタジー」など少し軟弱なイメージを持たれている方もいるかもしれません。実際に数年前までは私がそうでした。
ところがある日、お仕事で来日バレエダンサーのレッスンを間近で撮影したとき、彼らの隅々まで鍛え抜かれ研ぎ澄まされた肉体の力強さに、雷に打たれたような衝撃を受けたのです。
それは、わたしたち「人間」そのものが持つ、美、迫力、芸術性、に気づかされた瞬間でした。
そして落雷の直後に知ったのがこの『ニジンスキー』というバレエだったのです。
是非動画をご覧ください。
Nijinsky – Ballet by John Neumeier
え!!これがバレエ!!
そうなんです。バレエへの偏見で白く霞んでいた私の視界が晴れ渡り、目の前には無限の表現世界が広がったのです。
振付は現代バレエの巨匠、ジョン・ノイマイヤー。
ノイマイヤーは、20世紀はじめに生き数々の伝説を残すも若くして狂気に沈んだ稀代の天才ダンサー、ヴァスラフ・ニジンスキーの熱烈な信奉者、研究者、資料のコレクターとして知られ、ニジンスキー没後50年の記念の年、2000年に彼が芸術監督を務めるハンブルク・バレエ団でこの作品を初演しました。
そして画面右端の椅子の上で渾身の力を振り絞って叫んでいるダンサーが、ニジンスキーを演じるアレクサンドル・リアブコ。ニジンスキーが憑依したかのようなその存在感と、次第に精神を病んでいく表現にわたしの心は鷲掴みにされグワングワンと揺さぶられてしまいました。
こちらの動画はニジンスキーを演じるアレクサンドル・リアブコ集です。
Nijinsky – Ballett von John Neumeier
ダイジェストでも精神が崩壊していく様が分かりますね。凄いですね。
なんとわたしはその後2度もアレクサンドル・リアブコさんを撮影させてもらいました。
それでももっともっと撮影したい。そんな尊敬すべき表現者であり、わたしのインスピレーションです。
©︎ YUMIKO INOUE
もしかしたらお気づきの方がいるかもしれません。
はい、私が主宰するマガジン「Alexandre」は、アレクサンドル・リアブコさんのお名前からもらっているのです(もちろんご本人の了承済みです)。
ヴァスラフ・ニジンスキー、ジョン・ノイマイヤー、アレクサンドル・リアブコ、そしてアレクサンドル・マガジン。(並べてみたかった笑)
偉大な芸術に感動し、刺激を受け、背中を押されながら、感動の魂はずっと繋がっていくのだと思います。
「Alexandre」の名に恥じぬように、アレクサンドル・マガジンも伝説のマガジンにしたいと思います。
もちろんわたしは古典のバレエも大好きなのですが、
世界では今この瞬間も新しいバレエが生まれていて、自分も同じ時代の空気を吸っていると思うととても高揚します。
2021年にジョン・ノイマイヤーが芸術監督を務め、アレクサンドル・リアブコがプリンシパルを務めるハンブルク・バレエ団が来日します。もし機会がありましたら、生の舞台を是非体験してみてください。
次はショーをメインに演出、プロデュースをしている梅田亜希子さんに繋げたいと思います。
ある日「もう自分の好きな仕事しかしない」と言い放ち、実践し、見事に結果を出している凄く情熱的でクレイジーで素敵な人です。彼女のマスターピース、とても楽しみです。
今回の寄稿者
井上ユミコ
フォトグラファー/「Alexandre」編集長。広島県出身。雑誌、広告を中心にフォトグラファーとして活躍するかたわら、ダンスウェブマガジン「Alexandre」を主宰。「Alexandre」を通して得た海外との繋がりを活かし、オンライン・インターナショナル・ダンス・フェスティバルを開催したいと準備中。