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【保存方法から】日本酒のプロに聞く酒雑学【二日酔いしにくい飲み方まで】

燗がおいしい季節になってきた。

そこで今回は、日本酒の正しい保存方法や二日酔いしにくい飲み方まで、知って得する〈酒雑学〉にクローズアップ。情緒豊かな山中温泉街に位置する隠れ家的バー『和酒BAR 縁がわ』を営むご主人の下木さんにインタビュー。家庭でも簡単に手に入るつまみとお酒の関係もいろいろと教えてもらった。

 

『和酒BAR 縁がわ』店主 下木雄介さん
1984年生まれ。加賀市出身。県内外の酒問屋で修行を積んだのち、石川県初となる酒匠(唎酒師の上位資格)を取得。「醸造アルコールは悪くないものなのですよ」と下木さん。詳しくはお店で聞いてみよう。

質問1:日本酒の種類について教えて!

A.春に搾ったお酒を秋口に卸すのが「ひやおろし」です

日本酒は原材料や製造法の違いによっていくつかに分類されます。例えば特定名称酒のひとつである純米酒はお酒と米麹だけで作られたお酒であり、米由来のふくよかな香味が特徴的です。また、大吟醸酒や純米大吟醸酒は、吟醸系酵母に由来するフルーツのような香りが特徴で、精米歩合が50%以下という条件があるため酒米を多くする必要があり、さらにより吟味して醸すことから値段も高くなります。また秋口によく耳にする「ひやおろし」は、春に搾った新酒をタンクに貯蔵し、ひと夏を越してタンクの中の温度と外気の温度が同じくらいになった頃に出荷される日本酒です。熟成によって増した旨味が特徴で、江戸時代から呑兵衛たちの間で親しまれてきました。瓶詰めの状態で熟成されたものは〈秋上がり〉と呼ばれることもあります。

 

質問2:日本酒って何度で保存すればいいの?

A.21℃以下を目安に冷暗所で保存します

品質の変わりやすい醸造酒を保存する上で注意したいのは光(紫外線)と温度。火入れを2回した一般的な日本酒であれば、21℃以下を目安に、光のあたらない冷暗所などで保存すると良いでしょう。ちなみにこの温度は日本酒の製造法が確立された江戸時代の土間の温度だといわれています。熱処理がされていない生酒は冷蔵庫で保存してください。

 

質問3:二日酔いや悪酔いをしない飲み方って?

A.お酒と同量の水を飲んでアルコールを無毒化しましょう

水道水でも構わないので、お酒と同量の和らぎ水を飲みましょう。アルコールは唾液と混ざることにより無毒化されます。体内のアルコール濃度を薄めるのではなく、唾液を多く分泌させるために水分を補給するのが本来の目的です。また、悪酔いしないためには楽しいお酒を飲むのが一番です。こと日本酒に限っては、楽しいときはより楽しく、悲しいときはより悲しくというように、心を促進させる効果があります。気分が落ちこんでいるときはウイスキーなどの蒸留酒をチビチビと飲むのがおすすめです。

 

質問4:美味しいお酒の見極め方を教えて!

A.信頼できる酒屋を見つけるのが一番

さきほどお酒の管理について話しましたが、保存に適した温度と飲んで美味しい温度は、必ずしも一致するわけではありません。たとえば保存するうえでは冷蔵が好ましい生酒も、飲むときは10度前後がもっとも香りが立つものもあります。また、常温保存に適したお酒でも燗酒にするとより旨味が引き出される場合があります。しかし、こればかりはその蔵の酒を知る人でないと見分けることはできません。そんなときに頼りになるのが酒屋の存在です。石川県には信頼のおける酒屋がいくつもあります。今、どのお酒が美味しいか。その理由はなんなのか。そんな会話を重ねていくうちに自然とお酒に対する造詣が深まるはずです。また、最近は〈サケマルシェ〉などお酒にまつわるイベントも盛んに開催され、蔵人さんと交流する機会が増えました。日本酒の魅力はその気にさえなれば造った人と会えること。その昔から人々の生活とお酒が密接な関係にあった北陸であればなおさらです。

 

質問5:日本酒のラベルの読み方を教えて!

A.良い酒蔵はラベルにもこだわります

日本酒の伝統は日本人の心に受け継がれる様式美と近しい関係にあると思います。そのなかでラベルのデザインは酒蔵の酒造りに対する意思を表します。僕が好きなのは七尾市の布施酒蔵が造る〈天平〉のラベル。代表のお兄さんが描いたイラストがじつに印象的で趣があるんですよ。本来酒蔵はその土地の領主であり地域を守ってきた存在。だからこそ、その土地の営みを表現したラベルの描写は日本酒ならではの文化なのです。

 

質問6:日本酒に合うおつまみ、合わないおつまみは?

 

香りの高い吟醸酒とよく合うのがそばかりんとう。かりんとうの香ばしさと吟醸香の相乗効果によって、吟醸酒がより味わい深くなります。そばかりんとうは甘くないものが好ましいと思います。ほかにもおすすめは、カレーパンとはちみつと古酒のトリプリング。カレーのスパイスと古酒の成分がじつは同じであり、はちみつがこの両者の関係を取り持ってくれるのです。そして意外に感じるかもしれませんが、日本酒と醤油は必ずしもベストマッチではないというのが私の見解です。理由は、塩味と合う日本酒が減ったから。チーズも然りで、目利きが必要になってきます。(以上下木さん)

 

 

じつに奥の深い日本酒の世界。

もっとディープに覗き込んでみたい人は、情緒豊かな山中温泉街に位置する隠れ家的バー『和酒BAR 縁がわ』へ。県内の酒蔵で造られた日本酒を中心に、酒匠の店主が厳選した酒を常時30種類ほど用意する。銘柄ごとに異なる香りや味を楽しんでもらおうと、それぞれの個性に合わせた酒器で提供してくれる。和の趣を活かした空間で日本酒談義に肴に酒を楽しむ、そんな日もまた乙なものだ。

 

 

和酒BAR 縁がわ

エンガワ

石川県加賀市山中温泉南町ロ-82

TEL.0761-71-0059

営業時間/14:00〜24:00

定休日/木曜日

席数/カウンター5席、テーブル席4席 ※禁煙席あり

駐車場/1台

※この情報は取材時のものです。

 

※こちらの記事は2018年1月末発行『BonNo』vol.78を再編集したものです。

 

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