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プリンアラモードの甘い誘惑。「喫茶アイリーン」で過ごすノスタルジックな昼下がり。

昨年末に閉店した「珈琲館 禁煙室」をはじめ、純喫茶と呼ばれるような昔ながらの喫茶店がどんどん少なくなっています。

 

決してオシャレではないれけど、気取らず自然体でコーヒーが飲める安住の地。時代の流れだと分かっていながら、昭和世代の筆者にはどこか寂しい気持ちがあります。

 

そんな中、金沢市郊外のとある町で、昭和の香りがするレトロな喫茶店を見つけました。

 

白山市鶴来の日詰町。奥に見えるのは「金劔宮」の明神鳥居。

旧市街に灯りをともすスナック喫茶。

訪れたのは白山市鶴来、北陸最古の神社「金劔宮」へと続く表参道。かつては遊郭としても栄えた参道で、今でも当時の面影を伝える古い建物や街並みが残されています。

 

その一角にあるのが『喫茶アイリーン』。今夏にオープンしたばかりのスナック喫茶です。

 

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喫茶アイリーン

 

もともとは「再会」という昭和の頃から地元で愛されていたスナック。数年前に閉店してからしばらく空き家だった建物を改装するさいは、地元のお客さんが気兼ねなく通えるよう、ありのまま生かすことを心がけたそうです。

 

アイリーンというのは架空の女性の名前。扉を開けると外の景色とはガラッと変わり、まさに物語の世界へと誘われたような不思議な感覚に包まれます。

 

ボックス席の右手前にはカウンター席も。

 

仄暗い灯りの中に、ポッと浮かび上がるメニュー表。よく見るとプリンアラモードという、懐かしい響きの文字が書かれています。

 

これを目当てに訪れる人もいる看板メニューとのこと。ちょうど小腹が空いていたので、注文することにしました。

 

メニューは軽食中心で、馴染みのあるものばかり。ランチセットも提供している。

 

スナック「再会」を営んだ、亡きママの肖像画も飾られている。

 

筆者がアイリーンを訪れたとき、お店では若い女性3人組がお茶をしていました。平成生まれの彼女たちに「ノスタルジー感じちゃうよね」と言っても、その感覚は理解してもらえないはず。でも、居心地が良いから、周りを気にせず駄弁れるから、美味しいプリンが食べたいから、きっとまた来る。

 

懐古や郷愁というフィルターを通さずに、真っ直ぐな理由で純喫茶を楽しむ彼女たちが、ちょっと羨ましく感じました。

 

そんなことを考えているうちに、お待ちかねのプリンアラモードが出来上がったようです。

 

プリンアラモード 750円

子供の頃の憧れの記憶が蘇る。

カスタードプリンを主役に、フルーツやクリームが花を添える贅沢なアラモード。昭和時代の絶滅危惧種ともいえるスイーツですが、こうして見るとやっぱり華があります。アイスクリームが付いているのもうれしい。

 

卵感のしっかりした昔ながらの固めプリンは、奇をてらわない素朴な味。子どもの頃にデパートの飲食街で母親と食べた思い出が、記憶の底から蘇ってくるようです。

 

喫茶店の定番クリームソーダも追加で注文。

 

「昔はこのあたりにスナックや喫茶店が何軒もあったんですが、時代とともにどんどん減ってしまって。夜にカラオケが歌える店もほとんどないし、地元の人たちが集まる社交場のようなスナックをやりたいと思ったんです」

 

そう話すのは『喫茶アイリーン』の代表であり、白山比咩神社近くの人気バーガーショップ「Hello HAMBURGER」を経営する宮本航さん。

 

喫茶店を始めたのは、お店の持ち主から「再会」で使われていたものらしき年代物のコーヒーカップを譲り受けたから。いつ営業自粛になるか分からないコロナ禍への対応と、地元女性の働き口を増やす目的もあり、昼の営業をスタートさせたそうです。

 

ちなみに現在は「まん延防止等重点措置」の影響で、残念ながら夜のスナックは休業中。その代わりに期間限定の串焼き屋台を開いています。

 

昼間の喫茶店は、地元のママさんが中心となって切り盛りしている(実際の営業中はマスクを着用しています)。

 

譲り受けたのはニッコーやノリタケなどの国産アンティーク。現代にはない昭和レトロなデザインに郷愁を感じる。

 

遊郭として栄えた参道の一角に突如現れながら、まるで何十年も昔からそこにある雰囲気で迎えてくれる『喫茶アイリーン』。スナックと純喫茶という廃れつつある文化に火を灯す、最高の場所でした。

 

石川県の純喫茶をめぐる「喫茶店の特等席」も合わせて読む

 

 

喫茶アイリーン
石川県白山市鶴来日詰町カ153
TEL.080-5145-7194
営業時間/11:00~16:00(スナックは21:00〜24:00)
定休日/火曜日
席数/カウンター8席、テーブル16席
駐車場/あり
※こちらの情報は取材時点のものです。

 

 

撮影/林 賢一郎

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