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加賀蒔絵の精神を宿す道具たち。『Books under Hotchkiss』で、職人の創作魂にふれる

金沢21世紀美術館の目の前にある『Books under Hotchkiss(通称BUH)』は、本屋とギャラリーをミックスしたようなちょっと変わったお店。ものづくりや表現をするひとりの人物をフィーチャーし、その人物がアウトプットする作品とともに、発想のきっかけ(=インプット)となった書籍などを展示。2015年にオープンして以降、アーティストの頭の中を可視化できるエキセントリックな空間を3ヶ月ごとに展開してきた。

 

2016年「アニメーション実験室」の展示風景。

伝統工芸「加賀蒔絵」の精神を宿す道具たち

現在開催中の展示は「加賀蒔絵の精神を宿す道具」がテーマ。加賀蒔絵は加賀藩3代藩主である前田利常の代に確立された、金銀粉や螺鈿を用いたきらびやかな加飾で知られる金沢の伝統工芸。今回は200点以上におよぶ道具の中から厳選した80点の道具を撮影。大小のパネルとともに、職人自らが作り出す道具そのものに宿る精神性を紹介している。

 

当時の職人は技が盗まれないよう、ひとつの仕事が終わるたびに道具を折って捨てたという話。また、良い道具を作れる職人は良い漆器を作ることができる証でもあったそう。この展示を通して、華やかな作品の陰に隠れた職人のクラフトマンシップが感じられるはず。

 

加賀蒔絵の道具の豊富さは、工程の多さの証。

 

細部にまで神経が行き届いた仕事をするため、職人は道具から手作りする。

 

じつはこの展示、10月に開催された「KOGEIフェスタ」を受け継いだもの。蒔絵師であり、金沢漆芸会の会長を務める西村松逸さんのたっての願いもあって、『Books under Hotchkiss』での再展示となった。古来から受け継がれたクリエイションの粋を、存分に堪能して欲しい。

 

ちなみに1階のフロアでは蒔絵や漆芸の分野で活躍する若手作家の作品のほか、漆芸をテーマにした古書も展示販売している。

 

1階のフロアでは若手作家による作品を展示。

 

黒田沙知子作 赤螺鈿のブローチ38,500円。

 

黒木紗世作 花薫中皿16,500円。

みんなに頭の中身を覗いてもらいましょう

『Books under Hotchkiss』では、2019年の秋よりギャラリーのレンタルも開始。過去にフィーチャーされたアーティストのように、これまで影響を受けた本と作品を同時に発表できるそう(利用料金や審査についてはオフィシャルサイトを要チェック)。アーティストの頭の中身が覗ける新感覚の本屋として、金沢のまちに新しい風を吹き込んだ『BUH』。次なる展開が楽しみだ。

 

「道具に宿る -加賀蒔絵の精神を宿す道具たち-」の展示は1月19日(日)まで。

 

 

Books under Hotchkiss
ブックスアンダーホッチキス
石川県金沢市広坂1-9-11
TEL.076-222-1801
営業時間/11:00~18:00
定休日/月曜日(祝日の場合は営業)
駐車場/近隣にコインパーキングあり
※こちらの情報は取材時のものです。

 

(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)

 

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