【NATURAL LIFE】じいちゃん #06
私のじいちゃんは能登で 1 人暮らしをしている。現在 85 歳だ。
73 歳まで現役で働いていたじいちゃんは体力もあり筋肉マンだった。 仕事を辞めても山へ行って木を伐ったり田んぼへ行って草刈りしたりと家にチンとしているコトがなかった。
そんなある日じいちゃんはいつものように山へでかけた。斜面で木を伐っていた所「ずるっ」と斜面から 滑り落ち大腿骨を骨折してしまった。『年寄が骨を折ったらどうなるか』事の大事さを知っていたので私は不安 だった。この先どうなるんだろうと…。
年を取ってから骨折するとだいたいの人はそのまま寝たきりになると聞いていた。だけど私のじいちゃんは 体力もあってキン肉マンだったので大丈夫かなぁ~なんて思っていたけど予後は違っていた。 やっぱり思うように歩けない。今も杖がないと歩けない。だから家にいる事が多くなった。 みるみる内に筋肉は落ちていたった。 歌好きのじいちゃんはいつもテレビの前で歌番組を見ている。家にチンとする事ができないじいちゃんが 家でチンとするじいちゃんへと変わってしまった。
だけどそれは仕方のない事なのだ。だって、思うように 歩けないんだから。
先日じいちゃんを訪ねた。以前畑をしていた山の畑に梅の木がなっているから梅の様子を見にいきたかった。
私「畑行ってくるわ」
じいちゃん「俺も行く」
私「無理やって」
じいちゃん「いや、行く。連れてけ」
私「歩けるん?」
じいちゃん「歩けるわいや」
なかなか引き下がらない。車で行ける場所ではないのでどうしたものやらと思ったがじいちやんの意思は固かった。とりあえずじいちゃんを車に乗せて畑の近くまで車を走らせた。
畑までの道のりは危険で、私は前、じいちゃん真ん中、後ろに旦那という体制でじいちゃんが転ばないようにサポートしながら歩いた。
普通なら 5 分でつく場所もじいちゃんを連れて歩くと 20 分かかった。 じいちゃんは植えた木のコトをずっと気にしていた。 畑を辞めてからじいちゃんは畑に木を植えた。それがどうなっているのかずっと心配していたのだ。 木を見て木に絡まった草を杖でなぎ倒して、
じいちゃん「お前ちゃんと手入れせーま」
私「わかった」
と、じいちゃんから 木を受け継いだ。
帰り道は違う道から帰ってさらに 30 分かかった。じいちゃんは私の手を支えにしてゆっくり歩いた。 私は身体の自由がきかなくなったじいちゃんの手を引きながら木を植えたじいちゃんの気持ちを考えていた。
じいちゃんは昔からずっと山に木を植えてきた。
私は子供の頃から木を植えに行くのについて行っていた。だから私も木を植えるのが普通だと思っている。私にとって『木を植える』コトは、は普通のコトであたりまえのコトになっている。
今、日本の森は病気の状態だ。じいちゃんのような人が減っていって山を引きついだ後継者は今では負の遺産とまでいわれている山だけを引き継ぎ、先人達の『想い』までを引き継いでいる人は少ないように思う。
木を植えて木を育て木を使う。木は唯一の再生可能エネルギー。
どうか、どうか、山を譲りうけた人よ、今生きているじいちゃん達からの『爺言』を受け継いでほしい。
私も爺言を引き継いだ孫として何ができるのか?
◯自然と人の共生を考える【NATURAL LIFE】
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執筆者プロフィール
加藤麻美(Rootive 代表)
森と生きるために木を利用し、地球に暮らす人に安心と癒しを提供する『Rootive(ルーティヴ)』代表。里山の保全活動や里山の資源を使ったイベント運営など、多彩な活動を展開。自然が大好きで、特に山をこよなく愛している。
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