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神社仏閣の授与品|中正彦のボクの買い物かご #09

職業柄、日々いろいろなモノを見て、買っている雑貨屋『Joiner』のオーナーが、実際に購入したモノや気になっているモノを取り上げ、その魅力や背景、さらにはデザイン性までを語ります。

 

今回のコラムは、いつもとはちょっと感じが違う神社仏閣の授与品についてです。

 

グッズというとバチが当たりそうですが、ボクはハズしのアイテムとして捉えています。

 

白山比咩神社奥宮授与品

 

最初に紹介するのは、ボクの家の近所にある「白山比咩神社」の授与品。ボクくらいになると鶴来の本宮ではなく、霊峰白山の山頂に鎮座する奥宮の授与品になります。

 

奥宮神符(写真右)を飾るのは神棚ではなく(そもそも神棚はない)、コンスタンチン・グルチッチがデザインしたシェルフの最上段。ハズしという意味では、海外デザイナーの家具と神符の組み合わせは意外としっくりきます。

 

海外の友人に「欲しい!」とねだられて送ったこともありますが、これが海外の住居にもピッタリと合いました。それにしても外国人はどうして漢字が好きなのか。日本人が海外の細長いナンバープレートを付けたがるアレと同じなのでしょうか。

 

奥宮御守(写真中央・上)は、標高2,450m付近に位置する白山室堂からさらに1時間ほど登った、御前峰山頂付近に鎮まる奥宮で頒布されています。

 

深い紫色の厳かなデザインは、チャカつきのない大人のカッコよさ。たまに神社ガールや寺女子に「どこの御守りですか?」と声をかけられることがありますが、そんな時はスカして「奥宮な」と答えています。

 

そう、何よりも奥宮の授与品をいただくには白山登山をしなければならないのです。

 

 

しかもこの奥宮は、7月1日から8月31日の2ヶ月間しか開設されていません。

 

また、毎年デザインが変わる年号入り白山奥宮バッチ(写真中央・下)は、コロナ終息を願って「幕末の白山に現れ、疫病の流行を予言したと伝わる双頭の鳥」が、刻印されています。こちらは白山夏山登山記念のお土産としてお馴染みで、登山記念バッジの老舗でもある金沢の桂記章製。双頭の鳥は、ほかにも絵馬などが鶴来の本宮で限定授与されていました。

 

白山本宮守護符(写真左)は、その年の新米をしらやまさんに納めた返礼として、白山比咩神社近隣の農家だけが授与してもらえる特別な守護符です。なので本宮などの神社自体には置かれていません。

 

現代では、田んぼを作っている農家さんも減り、さらに衛生上のこともあって、お米用の巾着袋ではなく専用のビニール袋にお金入れて納める風習へと変化。稲刈り時期になると回覧板と一緒にビニール袋が各家庭に回ってきて、後日に白山比咩神社の刻印が入った輪島塗の箸とともに守護符が配られます。

 

この土地に新たに引っ越してきた若い方はどう思うのか分かりませんが、個人的には今でもこのような風習が残っているのは良いことだと思います。そしてこのようなシステムがなければ、神社やお寺は残っていかないとも思います。

 

そういった大人の事情は置いておいて、ボクは宗教的な漢字モノを現代のモダン住宅に合わせるのは、ハズしの意味でもカッコいいと思います。ボク自身、年を重ねたからなのか、今現在の気分なのか分かりませんが…。

 

 

漢字のカッコよさでいえば「長谷山 観音院」で行われる、四万六千日(しまんろくせんにち)のビラでしょうか。

 

金沢の人であれば、一度は四万六千日を知らせるビラや、軒先に吊るされたとうもろこしを見かけたことがあるかと思います。四万六千日とは、観音様の功徳日(旧暦7月9日)にお参りをすると、四万六千日分のご利益が得られるという行事。祈祷とうきびでも有名です。

 

【関連記事】四万六千日ってなんぞ?【長谷山 観音院】のトウモロコシとは。

 

今年の四万六千日は8月6日。朝6時から本堂の十一面観世音菩薩立像がご開帳となり、護摩木を火にくべてお焚き上げをする、護摩祈祷が行われます。十一面観世音菩薩立像が開帳されるのは毎年この日限り。夜にはろうそく祭りも開催されます。

 

四万六千日祈祷とうきび

 

20年以上前から、四万六千日のビラや軒先に吊るされた祈祷とうきびを見かけて気になっていたのですが、ボクも年を重ねて見え方も変わりこのカッコよさに気づきました。

 

四万六千日のビラは、藩政期時代から観音院に伝わる木版画で、毎年一枚一枚住職が手刷りするためそれぞれ表情が違います。この古くから伝わる歴史が生んだカスレも、またカッコよく感じます。

 

ボクは何年か前に刷りたてを一枚いただき、このビラを額装しています。そして昨年、いただいたビラをもとに、四国の老舗手ぬぐい工房とコラボして、キレイに裏抜けした手捺染の手ぬぐいを製作させて頂きました。

 

この迫力のあるカスれた縦書き漢字にヘルベチカフォントを合わせたデザインは、冒頭に挙げたハズしの意味でもピッタリです。今年も四万六千日に合わせて朝6時から、100枚限定で祈祷とうきびと一緒に販売されます。

 

当店「Joiner」でも、10枚のみ先行発売していますので、ご希望であればお問い合わせください。

 

四万六千日手ぬぐい

 

一年間軒先に吊るした祈祷とうきびは観音院に返し、新しい青いとうきびを求めるのが一般的です。しかし、ボクは卵苞(つと)や近岡屋の鰤巻きなどの藁細工と一緒に、家の壁に飾っています。

 

こちらの卵苞など、ボクの中で起こっている空前の藁細工ブームに関しては、今後また別の機会に書いていけたらと思います。

 

 

ひがし茶屋街から「長谷山 観音院」に続く参道沿いの家々では、四万六千日当日に五正色幕が掲げられます。また、旧町名が復活した観音町やひがし茶屋街の方々には、特別にこの五正色幕カラーの水引で結ばれた祈祷とうきびが配られます。

 

そして、もうひとつタイムリーな神事といえば、今ではいろいろな神社で催される夏越の大祓「茅の輪くぐり」でしょうか。

 

最近でこそ、多くの神社で設置されるようになった茅の輪くぐりですが、20年前の金沢では、宇多須神社と尾山神社、白山比咩神社くらいだったような気がします。

 

夏越の大祓 茅の輪くぐり

 

大きさやボリューム、出来栄えは、今も宇多須神社の茅の輪が最高です。この茅の輪は、金沢市二俣町の山中から刈り出された茅草(かや)を、竹で作った芯軸に巻き付けて作られています。

 

ひがし茶屋街の夏越大祓式に参加した関係者のみに配られるミニ茅の輪は、四万六千日の祈祷とうきびと同様、軒先に一年間吊るされます。ひがし茶屋街を歩くと、祈祷とうきびと色が変わったこの茅の輪もよく目にしますね。ボクも以前、特別に授与して頂きました。

 

茅の輪守

 

また「白山比咩神社」では、神職が稲わらで茅の輪を模して綯ったお守り茅の輪守を、数量限定で頒布しています。

 

ちなみに藁を編む事を綯う(なう)と言いますが、これも藁細工のテーマで詳しく書きたいと思います。そして、この神社仏閣モノもまだまだ書き切れませんので、次回に続きます。

 

 

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