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定食スタイルでインドネパールの味を楽しむ|煩悩を断ぜずして咖喱を得るなり #17

インドカレーが大好き!なんていっても、世界有数の多民族国家であり、800種類以上の言語が話されているインドでは、北と南、東と西で食文化は大きく異なってくる。インド料理をカレーひと括りで語るのは、健康志向の欧米人が味噌汁とトムヤムクンをアジアンフードとして同列に扱うのと同じくらいナンセンスなことなのかもしれない。

 

そのインドには、いくつかの料理を一皿で提供する「ターリー」と呼ばれる食事がある。もともとは僧侶に献上するもので、ごはんやチャパティなどの主食と、小皿に入ったカレーやスープ、副菜などを大きな銀皿に盛り付ける、いわゆるインド式定食だ。現地の伝統的医学「アーユルヴェーダ」では、舌で感じる食べ物の味が6つ(甘味・酸味・塩味・辛味・苦味・渋味)に分けられ、それらを毎食とることで体内のバランスが整うという考え方があるが、ターリーにもそうした概念が反映されている。

 

スタイリッシュな空間でカレーランチ

本日訪ねたのは6月にオープンしたターリー専門店『AAKU』。金沢21世紀美術館から鱗町方面へと向かう本多通り沿い、名店「酒屋 彌三郎」の裏手にある。

 

南インドのミールスや北インド料理、ネパールのダルバートなどから影響を受けたという料理を、国というジャンルにとらわれずターリーとして構築するのが『AAKU』のコンセプト。これまで石川県を中心に多くの店を食べ歩いてきたが、これほどターリーに特化したお店は記憶にない。

 

 

素材の質感を生かしたスタイリッシュな空間。建物の雰囲気を残しつつ異素材のプロダクトを掛け合わせることで、ほどよい緊張感が保たれている。無国籍で時代性を感じないBGMも店の雰囲気とマッチしていた。

 

オーナーの杉木太さんがカレーの魔力に取り憑かれたのは数年前。経営する片町のセレクトショップ「FUDGE UP NOTHING」の洋服を買い付けるため日本と海外を行き来していた頃、アメリカのとあるレストランで食べたインドカレーに感動したそうだ。

 

「その日は働きずくめでクタクタだったけど、カレーを食べたら明日もがんばろうという気持ちになれたんですよね。カレーには、疲れたり落ち込んだりしても、ポジティブな気持ちになれる不思議な力があると感じています」と杉木さん。

 

それからしばらくしたある日、食の大切さを痛感した杉木さんは、料理人である辻健人さんと出会うことになる。

 

メニュー考案から調理まで、すべてを手がけるシェフの辻健人さん。

 

「もともと富山県のエスニック料理店で働いていて、そこで仲良くなったインド人とネパール人の友達に本場のカレー作りを教わっていたんです。そのことを杉木さんに話したら、一緒にカレー屋をやらないかって。それから数年間、修行の期間を設けて今年6月にようやく開業することができました」

 

全国の名店と呼ばれる店を食べ歩きながら、試作と味見の繰り返し。オリジナルの味を構築していくなかで、少しずつ方向性が見え始めてくる。

 

「インドは国土が広いので、地域によって食文化は大きく異なります。僕自身、いろいろな地域のカレーを食べたけど、それぞれに魅力があって「このカレーで勝負しよう」と決め切ることはできませんでした。だったら定食スタイルで、それぞれの個性を一皿で表現しようとターリーに行き着いたんです」

 

 

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ジャンルレスなひと皿が骨の髄まで染み渡る

ダブルターリー 1,400円

 

『AAKU』で食べられるターリーは、シングルターリー、ダブルターリー、フルターリーの3種類。今回は、月2回の頻度でアップデートされるウィークリーカレー2種(Mサイズ)とスープ2皿、副菜がセットになったダブルターリーを注文してみた。

 

 

カシコジョールは、おもにネパールで食されるスープタイプのカレー。「インドやネパールのマイナーな料理にも目を向けていきたい」と辻さんも話すように、日本ではあまり目にすることのない料理が味わえるのも同店の特徴。使用するスパイスはごく少数、最小限の量で、骨付マトンの風味がグッと引き立てられている。スパイスが主張しすぎない輪郭のはっきりとした味である。

 

 

こちらは有頭海老の香りが豊かなアークプラウンカレー。インド料理の手法は崩さずに、コリアンダーやカルダモンなど清涼感のあるスパイスを調和させることで、オリジナルの味へと仕上げられている。

 

 

お馴染みネパールのダール(レンズ豆のスープ)にもひと工夫。ダールと言えば口直し的なやさしい味付けが一般的。しかし、こちらではジンブーというネギ科の植物をギーで炒めたものを香り付けに使っているためか、想像以上にしっかり目の味付け。これが固めに炊かれたバスマティ&ジャスミンライスともよく合う。コク旨な味わいにスプーンが止まらない。

 

 

ラッサル(トマトスープ)はスパイシーで辛味が強め。南インドのミールスには欠かせないスープだそう。ほかにもムラコアチャール(ネパール式大根の漬物)、ライムアチャール(酸味が効いたライムの漬物)、トマトチャツネ(ネパール式トマトソース)、パパド(ウラド豆の生地を乾燥させたスナック)を盛り付け。様々な味わいでアーユルヴェーダのラサ(6つの味覚)がしっかりと補われている。

 

新潟県燕市の陶芸家・澤田勇一朗氏に製作を依頼したという、特注のターリー(大皿)とカトゥリ(小皿)を使用。

 

赤ワインと肉以上に好相性とも言われるジンとカレーの組み合わせ。AAKUでは、鹿児島県産の煎茶「やぶきた」を使用した煎茶ジンソニックをはじめ、ジン系ドリンクを各種用意する。

 

じつはこの日は連日の暑さで夏バテ気味。しかしながら、ターリーを平らげて店を出る頃には身体の内側はポカポカと、なんとなく元気になったような感覚に。これが杉木さんの言ってた「不思議な力」なのかと、妙に納得してしまった。

 

 

AAKU
アーク
石川県金沢市本多町3-10-26
営業時間/11:30~14:45(L.O.)、17:30〜19:45(L.O.)
定休日/火曜日
席数/カウンター5席、テーブル6席
駐車場/平日4台、土日1台

※こちらの情報は取材時点のものです。

 

 

(取材・文/ヨシヲカダイスケ、撮影/林 賢一郎)

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