煩悩バンザイ!石川県がもっと
楽しくなるウェブマガジン「ボンノ」

冬のはじまりを告げる酒造りと能登のカニ|酒蔵若女将のまんでまいッ!#08

まんでまいは、能登弁で「とても美味しい」の意。奥能登の酒蔵を支える若女将たちが地元ならではの酒肴を紹介すると共に、日本酒の魅力について愉しく語ります。

 

こんにちは。数馬酒造の数馬しほりです。11月になると、ぐっと気温が下がり、冷たい雨で紅葉が一層色を深めています。急に寒くなると身には堪えますが、酒造りにとっては大切な気候です。

 

ところで皆さんは酒造りが一年の中でいつ行われているかをご存知でしょうか。酒造りは10月から翌年3月の冬の間に行われるのが一般的です。その理由は、日本酒を発酵させるために適した温度が低温であるからです。

 

数馬酒造では10月から酒造りが本格始動し、11月中旬から新酒第一弾である「竹葉 しぼりたて生原酒」が発売になりました。このしぼりたて生原酒を皮切りに続々と新酒が仕上がっていきます。日本酒好きが熱狂するシーズンの到来です。

 

 

数馬酒造では酒造りの序盤に普通酒を、そして純米酒、吟醸酒という順に酒を仕込んでいきます。最も寒い時期に仕込む造りを「寒仕込み」と呼び、香りときれいな味わいを追求される大吟醸の酒造りを大寒の頃に当てています。外気温の変動が日本酒の発酵の具合に微細に影響するからです。

 

こうして新酒の仕上がりは、11月にしぼりたて生原酒、にごり酒、12月に純米生原酒、2月に純米吟醸生原酒、そして3月に大吟醸生原酒というスケジュールになります。

 

 

新酒はその時だけに楽しめる新鮮な味わいが最大の魅力。しぼりたて生原酒はハッとするような旨みとキレ、純米生原酒はフレッシュな米の旨みと甘み、純米吟醸生原酒は上品な香りと透明感、大吟醸生原酒は華やかな香りとジューシーな甘みを楽しむことができます。

かくして11月は日本酒の忙しくも楽しいシーズンの始まりなのです。

 

写真提供:石川県観光連盟

 

同時に能登ではおいしい冬の味覚もとっても忙しい。

11月上旬にはズワイガニ漁が解禁となりました。ズワイガニのオスである「加能ガニ」はその身の甘さと旨みは言わずもがなの身悶えもの。ズワイガニのメスである「香箱ガニ」は、オスのズワイガニほど高価ではないので、地元で消費されることが多く、つい先日も初物のお裾分けをたくさん頂きました。

 

この蟹味噌が実に美味。子どもたちは内子をポン酢に浸けてうまいうまいと言いながら頬張ります。甲羅に熱燗を注いで蟹酒にしたり、贅沢にクリームパスタにしたり、香箱ガニは地元民にとって冬のはじまりを告げる楽しみのひとつです。

 

 

近くの宇出津港ではブリ漁も盛んに行われ、先日早くも大漁の知らせがありました。フグ、そしてタラもこれからどんどん美味しくなっていきます。冬の寒さが魚介の脂のりを良くしてくれるからです。

 

能登の海の幸にも感謝ですが、厳しい冬に漁に出かける漁師さんにも感謝を捧げましょう。

 

能登には「大敷(おおしき)」という定置網漁の漁師集団があります。陸から数キロ離れた場所に漁網を張って、袋網に誘導した魚を捕獲する伝統的な大敷網漁です。定置網漁がスタートする10月から11月には、「祈大漁」とかかれたお酒で皆様の安全と豊漁を祈願します。漁師さんたちのおかげで私たちは美味しい幸を頂くことができます。能登のヒーローです。

 

こうして申し合わせたように役者が揃います。今はやっぱりカニとしぼりたて生原酒。もう言うことありませんね。さぁ、目を閉じてみてください。新鮮なカニとお酒のフレッシュさ、カニの繊細な甘みとお酒の柔らかな甘み、カニの風味とお酒の余韻が織り重なり、体の隅々までしみじみと浸り入ります。

 

 

もう少し冬に向かうと、かぶら寿司とにごり酒、ふぐちりやタラ鍋には純米生原酒、というように、実にタイミング良く合口(あいくち)のものが出揃っていきます。自然の恵みと能登人の暮らしの阿吽の呼吸に甚だ感心するばかり。

 

こうした自然の食材と食卓の圧倒的な近さが能登に住んでいる私たちの幸福度を高めています。和食の料理人さんはもちろんのこと、フレンチやイタリアンのシェフも、能登の食材の豊かさを高く評価してくださいます。一度能登を訪れた方は、繰り返し足をお運びになる方が多いようで、酒蔵に立ち寄るお客様も、もう何度目よ!と、常連の方も珍しくありません。

 

 

いつまでも人々を惹きつける豊かな能登であってほしいと、自然と湧き上がる想いです。そして、魅力的な能登の恵みを最大限に楽しめる日本酒を丁寧に届けていきたいと思います。日本酒の造り手として、こんなに幸せな舞台はありません。いつでも美味しいものたちが待っていますから。

 

さぁ、そんなこんな冬の始まり。寒さに向かいますから皆様も体を温めてお過ごしくださいね。私も繁忙期にダイブします。皆様の日本酒ライフがますます幸せでありますように。ここまでお読みくださってありがとうございます。それではまたお目にかかります。

RECOMMEND ARTICLEおすすめの記事

WHAT’S NEW新着記事