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秋の夜長を楽しむとっておきの日本酒タイム|酒蔵若女将のまんでまいッ!#06

まんでまいは、能登弁で「とても美味しい」の意。奥能登の酒蔵を支える若女将たちが地元ならではの酒肴を紹介すると共に、日本酒の魅力について愉しく語ります。

 

こんにちは。数馬酒造の数馬しほりです。今月も能登に暮らして感じる【食の楽しさ、お酒の楽しさ】をお伝えしたいと思います。

 

かつてない暑さを経験した夏も過ぎ、ようやく能登でも涼風を感じるようになりました。さっそくですが、皆様は秋のお酒「ひやおろし」をご存じでしょうか?9月を迎えると、石川県内の酒蔵では「石川ひやおろし」が一斉に発売されます。スーパーや酒屋さんには色とりどりの酒瓶が勢揃い。各蔵の飲み比べも楽しく、毎年この季節を楽しみになさっている方も多くいらっしゃいます。

 

 

「石川ひやおろし」は、冬に造った新酒を次の秋まで貯蔵して寝かせ、出荷直前の火入れ処理を行わずに「生詰め」したものです。一定期間貯蔵することで日本酒がまろやかさを帯び、生詰めによって芳しい香りとボリュームのある味わいが楽しめるお酒になります。「ひやおろし」は秋の訪れを感じさせ、同時に日本酒ムードもぐっと盛り上げてくれるお酒なのです。

 

酒蔵の私たちにとっても「ひやおろし」を迎える日は毎年特別な気持ちになります。日本酒がますます美味しくなっていく季節の始まりを告げるからでしょう。社員総出で準備に取りかかることも結束力に充足を感じる有意義な時間です。ひと瓶ひと瓶のお酒を準備しながら、お手に取るお客様の姿を浮かべ、これから始まる新酒造りへの士気を高めています。

 

 

数馬酒造の「竹葉 純米吟醸 ひやおろし」は能登産山田錦を100%使用しています。お米を生産するのは志賀町のゆめうららさん。繊細な甘味とすっきりとした酸味が楽しめ、きのこや焼き魚などの秋の味覚に、スダチやカボスをきゅっと搾ったお料理と相性抜群です。柑橘を合わせることでお酒の甘味がぐんと増します。

 

また、酒器や温度帯によっても味わいの表情が豊かに変わるので、日ごとに楽しみ方を変えてみるのもおすすめです。やはり「ひやおろし」の特徴的な製法である【熟成】と【生詰め】が、きれいな味わいの中に陰影をつけるように日本酒に奥行きと複雑性を持たせているからこそだと思います。ぜひ、お好みの楽しみ方を見つけて頂けたらうれしいです。

 

各蔵が「石川ひやおろし」を紹介している石川県酒造組合さんの動画も要チェックです。数馬酒造は妖精たちがおすすめの楽しみ方をご紹介しています。よければ一度ぜひご笑覧くださいませ。クスッと笑って頂けたら本望です。

 

 

「ひやおろし」のお供である秋の食材は、それはもう枚挙に暇がありません。新米も美味しいし、牛肉もお魚もしっかり脂が乗ってきます。能登ではアオリイカ漁が解禁になって、プリプリのイカにも夢中です。栗も美味しくなっているし、そう、もうしばらくしたらきのこ。大好きな松茸の土瓶蒸し、シバタケのお味噌汁、このみ茸を焼いて…。あぁ、食べるのに忙しいだなんて、幸せな悩みです。

 

私の祖母は山歩きの人でしたので、小さい頃にはこけ取り(きのこ狩り)や栗拾いに連れて行ってくれました。秋になると祖母と過ごした一面暖色の景色を思い出します。

 

 

さて、ここで、秋の味覚と「ひやおろし」のひとときを爆発的に格上げしてくれるとっておきの能登アイテムを2つご紹介します。ちょっとハードルが高いかもしれませんが、クオリティオブライフが劇的に上がることをお約束いたします。

 

ひとつは、能登珪藻土の七輪(しちりん)です。

 

数馬酒造がある能登町の隣町の珠洲市は、豊かな珪藻土に恵まれた七輪の産地です。地下から珪藻土を切り出し、彫り上げ、一昼夜かけて窯焼きして作られます。軽量かつ外側が熱くならないため扱いやすく、形も小さいものから大きいものまでありますので、お好みのサイズを購入することができます。私は丸型の七輪を愛用しています。

 

 

もうひとつは同じく珠洲市の大野製炭工場さんの木炭です。

 

私調べでは大野さんの炭は煙が少なく、一度火が付くと均一な真っ赤な色になり、ずーっと熱い。良い炭だなぁと、思わずつぶやきながら最後までしみじみと楽しみたくなる炭なんです。それもそのはず、大野さんは茶席で使われる本格的な菊炭の作り手さんなのです。あまりにもきれいに火が入り続けてくれるので、お肉を焼いて楽しんだ後も、何か焼くものはないかと戸棚の干物なんかを物色し始めるのがお決まりです。

 

 

余談ですが、私の実家でもこの七輪が度々登場したものです。玄関の扉を開けると家の中が炭火の匂い。「あ、またやってるな」と見なくても分かります。秋のきのこはもちろんのこと、いしりの貝焼き(ホタテの貝殻で茄子をいしりの出汁で炊いたもの)なんかも七輪で楽しんでいました。そしてやっぱりお嫁に来た能登町の自宅でも、バルコニーに七輪をスタンバイさせています。

 

七輪で焼いてじんわりと汗をかいた芳しい松茸。牛肉だって炭火だとやっぱり違う。銀杏も焼くのも良いですね。焼き魚は煙と匂い注意なのでお外でどうぞ。恵みを頂く喜びが倍増する魔法の七輪を囲み、美味しいものを頬張りながら盃を傾ける。能登の豊かさを口いっぱい胸いっぱいに噛みしめるひとときです。

 

 

最後に2つ、日本酒好き、美味しいもの好きな皆様に大切なイベントのお知らせです。

 

10月7日(土)、8日(日)に金沢市しいのき迎賓館にて「石川の地酒と美食の祭典 サケマルシェ」が2日間にわたって行われます。石川県内の人気飲食店様のフードと、県内酒蔵28蔵の日本酒が楽しめる一年に一度の大イベント。もちろん数馬酒造も出店しますので、ぜひお越しくださいませ。

 

そして10月22日(日)には、能登町にある日本海倶楽部さんを会場に「能登発酵文化祭」が行われます。

 

こちらはトークイベント、一日限りの発酵レストラン、キッチンカーや日本酒と発酵食の販売ありの、能登の発酵を楽しむイベントです。能登町内や金沢からもバスが出るそうですよ。最新情報はInstagramで更新されていますので、チェックしてみてくださいね。

 

どちらのイベントもこちらのコラムをリレーする松波酒造さんも参加していて、能登発酵文化祭では私と聖子さんがトークセッションに参加させて頂きます。「BONNOさんのコラム読んだよ!」なんて言って頂いた際は、きっと嬉しくて小躍りします。

 

 

今回もたっぷりお話させて頂きありがとうございました。最後までお読みくださって感謝です。皆様の日本酒ライフがますます楽しく、心和らぐひとときでありますように!それではまたお目にかかります。

 

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