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能登のお祭りと能登の梅|酒蔵若女将のまんでまいッ!#04

まんでまいは、能登弁で「とても美味しい」の意。奥能登の酒蔵を支える若女将たちが地元ならではの酒肴を紹介すると共に、日本酒の魅力について愉しく語ります。

 

こんにちは。能登町宇出津にあります「数馬酒造」の若女将、数馬しほりです。今月も能登に暮らして感じる【食の楽しさ、お酒の楽しさ】をお伝えしてまいります。

 

さて、能登では7月に入り、各地で夏祭りが始まりました。その皮切りとなるのが、7月上旬に行われた能登町宇出津の「あばれ祭」です。「あばれ祭」は神輿を激しく乱暴に扱い、神様を喜ばせるという勇壮で珍しいお祭り。いつもは穏やかな宇出津ですが、燃え上がる松明とともに街中が人々の熱気に包まれ、30基を超えるキリコが街を練り歩き、夜通し威勢の良い掛け声と太鼓が2日間にわたり鳴り響きます。

 

「暮れと盆に帰ってこれなくとも、祭りには必ず帰ってくるもんや」というのは、宇出津では常識中の常識。それくらいに、地元ではとても重要なお祭りなのです。

 

 

そんな「あばれ祭」の訪れとともに最盛期を迎えるもうひとつの風物詩があります。それは「梅」です。数馬酒造は15年ほど前から能登産の梅を使った日本酒ベースの梅酒を製造してまいりました。『竹葉 能登の梅酒』はいまや堂々たる人気商品のひとつ。この梅酒の仕込みが「あばれ祭」の準備と重なり、酒蔵の中はもうテンヤワンヤ。「今日も梅、明日も梅。いやいや祭りだ」と一層活気づくのです。

 

じつはこの梅について、我々は今年大きな決断をしました。長年、梅酒に漬け込む梅は珠洲市で栽培された契約農家さんの梅を使用してきましたが、近年は高齢化などにより担い手が不足し、少しずつ収穫量が減っていたのです。梅の木の管理が大変なので伐採することを選択なさる農家さんもいらっしゃいます。そんな状況をなんとかしたいと思い、梅の農地管理を引き継がせていただく決意をしました。梅の木については知識も経験もありません。でも、能登の未来を想う気持ちを大切に、とにかくやってみようという声が社内で揃いました。快く賛同してくれたメンバー達に本当に感謝しています。

 

 

早速まずは草刈りです。梅の実収穫前の三ヶ月前から毎月草刈りをします。当日その場に向かった私は唖然。イメージしていた数倍の背丈の草が、もうボーボーを通り越してまるで未開拓地。ご協力くださる地元の農家さんと共に、5人がかりで3時間かけ、梅の木の全容を明らかにしました。草刈りひとつで面食らっている場合ではありません。これからいよいよ収穫です。

 

 

梅の実は梅雨に入り雨に打たれる度にぐっと膨らむと言います。黄梅の雨とも言うそうです。その通り、3日ごとに通う度、すずなりに実を付けてくれました。農家さんからの手ほどきを受けながら、せっせと収穫をします。醸造責任者の栗間は「酒造りはいつもうつむいている作業だから、上を眺めながらの作業は新鮮。でも首が痛い…」と。本当にほんの短時間、梅の木を仰ぎ、実をもぎ取るだけでも、首が、腕が、背中が、痛い…。同時に、これまでこんなに大変な作業を、毎年毎年、続けてくださっていたんだと、感謝の思いが込み上げてきます。

 

そんな我々を横目に農家さんは手慣れた様子であっという間に籠をいっぱいにします。我々は3時間作業をしても大きな箱いっぱいにするのがやっとという感じで、「これは一粒も一滴も無駄に出来ないね」と皆で笑い合いながらも、その思いを強くしました。

 

 

収穫した梅の実は、1週間ほどかけて早速ひとつひとつ手作業でヘタ取りを施します。そしてキレイに洗い、お酒に漬け込むのです。この間、酒蔵は甘酸っぱい梅の香りに満たされます。

 

 

数馬酒造の『竹葉 能登の梅酒』は「忘れがたい味わい」と言っていただける、濃密な梅のエキスが特徴です。そして純米酒をベースにしていることによる深い旨味が味わえます。実はその秘密は梅の実を二度漬けしていることにあります。1年間漬け込んだ梅の実を梅酒のタンクから取り出して、新たに収穫した梅の実を再び漬け込みます。こうした手間ひまと2年の歳月をかけて「竹葉 能登の梅酒」が完成します。

 

ちなみに、梅酒から取り出した梅の実はそのままパクリと食べて美味しいおつまみとして販売(竹葉 能登の梅酒梅)しています。疲れた体にも良いですし、お料理に活用することも出来ますので、密かな好評を頂いています。

 

 

ここで「竹葉 能登の梅酒」をお料理に活用したレシピをご紹介。「スペアリブの能登の梅酒ソテー」です。お肉は、豚肩ロース、骨付きラム肉でも美味しいですよ。写真はラム肉で作ったものです。

手が込んでいるように見えますが、作り方はカンタン。2人分でしたら250gほどのお肉をご用意ください。お肉はしっかりお塩をまぶしてしばらく休ませ、出てきた水分を拭き取ります。骨付き肉の場合は軽く下茹でします。フライパンに油をひき、お肉の両面に焼き色を付けたら、水と梅酒を各大さじ1、醤油を小さじ1、お好みでバルサミコ酢をほんのちょろりと加え、蓋をして弱火で3分ほど蒸し焼きにします。蓋を開けて水分を飛ばし、照りが出るまでソースを煮詰めて完成です。

 

梅酒はお料理の場面では、砂糖、酒、みりん、酢の代わりになるので、調味料としても優秀だと思います。こちらのお料理はぜひ「竹葉 能登の梅酒」の炭酸割りとご一緒にどうぞ。梅はクエン酸たっぷりですから夏の疲れの癒やしになりますね。同時に暑さに負けないスタミナを備えたい夏に、酸味のおかげでお肉をさっぱりと召し上がれます。この季節におすすめの食べ合わせです。ぜひお試しくださいね。

 

 

最後に、ひとつお知らせです。7月7日に石川県内の20の酒蔵が仕込んだにごり酒「夏にごり」が一斉発売されました。 栄養価の高い米こうじを多く含んでおり、まろやかな口当たりと日本酒らしい旨味と米の甘味が楽しめる季節限定のお酒です。石川県にお住まいの皆様、お立ち寄りの皆様、よろしければ夏のにごり酒で暑気払いしてくださいね。このコラムをお読みいただいている読者の皆様には、もちろん「竹葉」と「大江山」をおすすめいたします!

さてさて、そんなこんなで、今回は能登のお祭りと梅についてお話させて頂きました。いつもながらまだまだ語り続けてしまいそうですが、今回もこの辺で。最後までお読みくださって本当にありがとうございます。

 

皆様の日本酒ライフがますます楽しく、心和らぐひとときでありますように。

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