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【観ずる日々】第3回:メロディ

良いメロディって何だろう。一体どこからやってくるのか、未だによく分からない。自分が書いたメロディの「良い」と感じてる部分に聴き手も同じ「良い」をキャッチすると、初めてそのメロディは「良いメロディ」ということになる。メロディは伝達手段で、一人で所有していても意味がない。これが最近の僕のメロディに、そして音楽に対する考え方だ。難しいものよりポップで分かりやすいメロディが好きだ。シンプルですぐ歌えるメロディ。最初からそこにいたかのように当たり前に存在しているメロディ。

 

僕の場合、良いメロディは何も考えずあっさり書いたものが多い。一生懸命作った実感がないから直後は不安になることもあるが、それでいいのだ。「Stars In Your Eyes」「Melody At Night」「Magic!」など、たくさんの曲をそんな調子で書いてきた。

 

依頼を受けて作曲する場合は、最初の打ち合わせ時にメロディが浮かぶことが多い。映画「十年 Ten Years Japan」のために書いたテーマ曲「I’m Still In Love」は、事務所スタッフから電話で企画概要を聞きながら作曲し、15分で書き上げた。ファーストインプレッションというのが自分の場合確実にある。最初を掴み損ねてしまうと思考の沼にハマりやたらと考えすぎてしまう。メロディは曲の心臓。考えすぎはよくないなとつくづく思う。

 

その分アレンジはあらゆる角度から考えられるすべてのパターンを検証し取捨選択している。自分はどうやらリズムやハーモニーは複雑なものを好む。一曲の中でシンプルさと複雑さが大胆に同居していると心地よい。破綻一歩手前のきわどいバランスで成立している状態。人としての僕自身のバランスなのかもしれない。

 

最近買った本たち。

 

 

 

◯Kan Sanoの音楽的ライフコラム【観ずる日々】

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執筆者プロフィール

Kan Sano

石川県金沢市生まれ。キーボーディスト/トラックメーカー/プロデューサー。バークリー音楽大学ピアノ専攻ジャズ作曲科卒業。国内外のアーティストのライブやレコーディング、コンピレーションに多数参加するほか、自身名義の最新アルバム「Ghost Notes」が好評発売中。

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