【NATURAL LIFE】道 #12
地中で植物の根が絡まり合い共存するするように、自然と人も絡まりあい共存していくためには。里山の保全活動を行うナチュラリストの目線で見た、自然にまつわるコラムです。
茶の道
今まで日本人でいながら茶道に触れたことがなかった。
昨年お茶の先生と出会い興味を持ち茶道の歴史について調べてみると、日本にお茶がもたらされたのは、遣唐使として唐に留学した僧侶(空海・最澄)たちが持ち帰ったのが始まりとされている。 しかし、当時は根付かず喫茶は廃れ、茶道は鎌倉時代に栄西(えいさい)が臨済禅とともに抹茶法を伝えたことが始まりといわれている。抹茶法、というものがあるのだと知る。やはり奥が深い。
調べだすと茶道といえば「千利休」ということしか知らないことに気づき「え、大丈夫かな私」と思いながらとにかく御水屋見舞を買いに和菓子屋さんへ走った。
※御水屋見舞(おみずやみまい)…お茶会などに呼ばれたときに、 お招きいただいたことに対しての感謝の心を表したお礼や、お茶会開催の準備の大変さをねぎらったり、お手伝いの方への慰労の意味を込めて贈るもの。
お茶室
お茶室に入る前に竹柵があり、そこから先は結界になっていると聞き少し背筋がピンとした。
茶室に入る前に手を清め、いざ茶室へ。大きな私が入るには狭い戸を開けたとき、ここから何か勝手に神聖な場所に入るんだという感覚になった。
お茶室に入ってからは、先生やお弟子さんに作法を教えてもらいながら濃茶をいただいた。
先生のお茶をたてる所作がそれはもう美しく、見惚れてしまった。
私なんぞがお茶を教えていただくには恐れ多い先生にもかかわらず、とても穏やかで、緊張の窮屈さもなく、先生のおもてなしの心が伝わり、茶道とは心が先で形は後から、所作は心を伝えるための手段なんだと感じた。
一見茶道といえばお茶を飲むための作法と思うが、お茶を飲むための作法だけではなく、座り方や、襖の開け方や閉め方など、美術、工芸、書画、生花、茶室建築や、菓子にいたるまで幅広い分野にまたがって教えていただき、 そのひとつひとつに奥があり、日本人の忘れてしまっている「何か」が詰まっているように感じた。
その道
『茶道』といえばおそらく大体の日本人は知っている言葉ではある。しかし、作法まではその門をくぐる者にしかわかり得ないもの。あたり前のことなのだが。
そのあたり前のことを我々は忘れがちになってしまう。考えてみれば、知っているようで知らないことはたくさんある。
昨今、『本当もウソ』もわかりにくくなっていると感じる。匿名の人がネットに書き込んだことを簡単に信じてしまうから怖い。まるでそれが正しいことだと信じこんでしまう。
自分の言葉に責任をもって話せることなんか自分が経験したことくらいしかないはずなのだが。
今回、何も知らず形から入ったが、茶道の心の一部を垣間見た気がした。
やはり、経験がすべてで自ら選らび取らなければ、すべての可能性を捨て去ることになる。
道はいくらでもある、どの道を進むかはいつわりの情報に躍らされることなく自ら選べたらいいな。
◯自然と人の共生を考える【NATURAL LIFE】
→バックナンバーが読める記事一覧はこちら
執筆者プロフィール
加藤麻美(Rootive 代表)
森と生きるために木を利用し、地球に暮らす人に安心と癒しを提供する『Rootive(ルーティヴ)』代表。里山の保全活動や里山の資源を使ったイベント運営など、多彩な活動を展開。自然が大好きで、特に山をこよなく愛している。
HP:Rootive
ツイッター:@rootive_forest
インスタグラム:@rootive
フェイスブック:@rootive.kanazawa