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スープと麺と具が三味一体。『自家製麺 のぼる』の京ラーメン

 

『自家製麺 のぼる』の麺が好きだ。

熱々の鶏白湯スープから麺をすくい上げて、口に入れる瞬間が。

プツッと歯切れの良い麺の食感に、鶏白湯のすっきりとしたスープと柔らかい豚チャーシュー。

一体感が半端ないこのラーメンを前にすると、ただひたすら。完食を目指して箸が進む。

 

営業は11時から15時。お昼のみの『自家製麺 のぼる』。

ピーク時ともなると、空席待ちをするのは当たり前。休日になるとその列はもっとすごい。

 

それでも回転が早いため、それほど待たずして着席できる。

 

店舗は、犀川の若宮大橋を渡って玉鉾「コープたまぼこ」の敷地内にある。

 

ぜひ、仕込みを見せてほしい。

そうお願いすると、店主の紙丸 登(かみまる のぼる)さんは快諾してくれた。

営業を終え、夕方17時ごろから翌日分の仕込みはスタートする。

自家製麺はこうして作られる。

店舗の奥にある製麺場。営業中は電気を消しているためか、ほとんどのお客は気がつかない。

 

製麺機で生地を帯状に。部屋の中は、湿度と温度が一定に保たれていた。

 

自家製麺を作り始めて10年目。

毎晩、翌日分の100〜150食分の麺を作っている。

 

紙丸:今の場所に移転してくる前は、卸専門の製麺業者から仕入れた麺を使っていたんです。ある時『客野製麺所』さんでラーメンを食べた時に麺が美味くて。こんな麺が作れたらいいなと、移転したら自家製麺にしようと思ったんです。

 

麺は小麦粉と水とかん水。

この3つの組み合わせと加える水量によって食感が変わり、全く違った麺になるそうだ。

 

小麦粉はどういうものを使っているんですか?

 

紙丸:今使っているのは、食パンに使うECHORD(エコード)という強力粉。そこに香川県から仕入れている全粒粉をブレンドしています。細かい粉なんですが、味がしっかりしています。試してみていいなと思ったらしばらくそれを使って、他でも試してみてよかったら採用しています。

 

およそ2時間かけて作られる自家製麺。

帯状の麺を1mmまで薄く伸ばしてからカットする。

 

カットし1食分約140gずつまとめる。

 

美しいストレートの中細麺。この後はビニールをかぶせ、乾燥しないよう一晩寝かせる。

のぼるさんが夜営業をやめた理由。

休むことなく次の作業へ。

ゆっくりできる時間はあるのだろうかと、1日のスケジュールを聞いてみると、

 

8:00  店に到着、スープに火を入れる

8:30  朝食、お米を研ぎ、トッピングをカット

10:00スープをこす

10:45 オープン準備

11:00 開店

 

15:00 閉店

15:30 昼食、片付け

17:00 鶏ガラを掃除

18:00 スープを取り始める

19:00 麺・チャーシューの仕込み、夕食

 ↓

     スープの火を止めて帰宅

 

超ハードだった。

 

紙丸:自分は不器用なタイプで。仕込みの作業も効率的にできたらいいんだけど、ひとつひとつ集中してやらないとできないので。だからどうしても時間がかかります。以前は夜営業もしていたんですが、そうすると帰りが遅くなってしまって、ずっと寝不足だった。5年くらい経ったとき流石に体調を崩してしまったので、それで昼のみ営業、夜は仕込みに集中することにしたんです。

 

ひとり黙々と作業。こうして毎晩、のぼるの味は作られていた。

スッキリと濃厚な鶏白湯。

スープは鶏白湯をメインに、豚骨と魚介をブレンド。

豚骨スープは隠し味程度で、あくまでも主役は鶏白湯。

魚介は蕎麦屋の返しのように、ラーメンの醤油ダレに加えている。

 

掃除した鶏ガラを寸胴に入れてスープをとる。

 

黄金に浮かんでいるのが鶏油。途中で鶏油をすくい上げる。

 

その次は、チャーシューの仕込みへ。

チャーシュー作りは店舗の2階で。専用のオーブンを置いたチャーシュー部屋があるのだ。

 

部位は肩ロース。焼く3時間前に塩をする。

 

オーブンに入れ、50分から60分かけてじっくり火を通していく。

楽しみはコーヒーとラジオ。

ここでブレイクタイム。

ちょっとコーヒー淹れますねと、入れてくれた。

 

落ち着ける時間ってあるんですか?

 

紙丸:ある程度区切りがついたらコーヒーを飲んだり、夕食を食べたりしています。コーヒーが好きで、どうせ一杯飲むんだったら美味しいのを飲みたいです。笑

 

豆は挽きたてを、温度計で湯温を測って淹れるという徹底ぶり。湯を雪平鍋で沸かすところにラーメン屋らしさがただよいグッとくる。

 

「チャペック」から買ってくるというコーヒー豆。紙丸さんに入れてもらったコーヒーは香り高く、異常に美味しかった。

 

仕込み中、耳のお供はラジオのようで。

 

紙丸:大体、曜日もラジオ番組で把握していますね。好きなのは水曜日にMROラジオから流れるTBSラジオ「東京ポッド許可局」。これはもう楽しみで、いつも大音量で聴いています。

ラーメン屋になったのは師匠がきっかけ。

紙丸さんがラーメン屋を開いたのは、30歳の時。

 

紙丸:その1年前、有松でお店をされている『福座』のおやっさん(店主の福田さん)が京都で『福三』というラーメン屋をされていて、そこで働かせてもらったんです。もともとはおやっさんが和食をしていた頃、その下で働いていたのが縁で。その後京都にラーメン屋を出された時に呼んでくれました。ラーメンはそこまで好きじゃなかったんですが、ただおやっさんが作るラーメンだったら絶対美味しいだろうと思ったので食べにいったんです。そしたらめちゃくちゃ美味しくて。感動しました。僕の中でおやっさんの存在というのはかなり大きいです。

 

そして俺はラーメン屋になった『麺や 福座』がたどり着いた渾身の一杯

 

鶏白湯スープもまた、師匠に習った作り方をそのまま継承。師匠が作るラーメンが美味しいからこそ、このスープで十分と自信を持って作り続けてきたそうだ。

 

紙丸:たまにおやっさんの店に食べにいくんですけど、やっぱり美味しい。ただ美味しいだけじゃなく、あたたかい人情が溶け出しているような優しい味がするんです。自分も歳とともにそんな味が出せるようになりたいと思っています。ラーメンって、作り手の人柄が一杯にでてくる不思議な食べ物。そこがラーメンの魅力的なところです。

 

完成したチャーシュー。端の部分は表面を炙ってチャーシュー丼に使う。

初見で食べるなら。オススメは京ラーメン。

これから初めて『自家製麺 のぼる』を訪れるという方におすすめしたい一杯がある。

それは京ラーメン。

鶏ガラをメインとしたスープの味をダイレクトに味わうことができる一杯だ。

 

紙丸さんが大切にしているのは「麺とスープとチャーシュー」。

3つのバランス。

京ラーメンをより美味しく味わってもらえる一杯にしようと、この黄金バランスを試行錯誤する日々。

自分が自信を持って提供できる京ラーメンにしたいと思っているそうだ。

 

こうしてできあがったスープ、麺、具材は翌日、お客の前で珠玉の一杯となる。

 

熱々のスープを注ぎ入れ

 

茹で上がった自家製麺をほぐし入れる。

 

チャーシューと青ネギ、メンマを乗せたら完成。

 

京ラーメン750円。味変の要、自家製のにんにく唐辛子味噌が丼の淵に添えてある。

食べる時間で味の印象が変わる!?

『自家製麺 のぼる』では、スープのブレを最小限に抑えるため営業前にスープを漉し、提供する毎に手鍋で人数分を温めながら使っている。

それでも、営業始まりと終わりとで、スープの印象は若干変わると紙丸さんはいう。

 

紙丸:好みにはなりますが11時のラーメンはフレッシュな感じ。軽やかでキレのあるスープで、あっさりしていると思います。13時くらいになるとスープが落ち着いてコクが出てくる。クッタリモッタリとした感じです。いつ食べにきていただいても同じ味になるよう調整はしているんですが、あっさりが好きな人は早い時間帯に、コクがある方が好きな人は遅めの時間帯に来ていただくのがオススメです。

 

毎日作り、毎日食べている人が言うのだから、違いない。

こんなことを聞いちゃったら、時間をずらして食べに行きたくなるじゃないか!

 

話を聞けば聞くほど、すっかり京ラーメンの口になってくる。

明日はオープンと同時に入店して、フレッシュで軽やかなラーメンに舌鼓を打ちたい。

 

 

自家製麺 のぼる

石川県金沢市玉鉾1-117

TEL.076-200-9397

営業時間/11:00〜15:00(なくなり次第終了)

定休日/火曜日、不定休あり

席数/カウンター10席、テーブル8席

駐車場/共有駐車場あり

※この情報は取材時のものです。

 

(取材・文/森内幸子、撮影/林 賢一郎)

 

 

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