【NATURAL LIFE】目の前の風景が変わるかもしれない #20
地中で植物の根が絡まり合い共存するするように、自然と人も絡まりあい共存していくためには。里山の保全活動を行うナチュラリストの目線で見た、自然にまつわるコラムです。
カメムシが家の中にやってきた。カメムシは寒さを運んでくる。
冬支度を始めるサインである。
軽トラックのある風景
私が住んでいる地域の湯涌温泉は金沢の奥座敷といわれるだけあり、自然豊かな場所。
田んぼや畑がそこらじゅうにあり軽トラックはもはや湯涌の景色と言えるのではないかと思うくらい。
軽トラのある風景。
私も将来乗りたい。
収穫時期や田植えの時期には軽トラックの集会が見られる(ただの偶然なんですがね)。
ふと車を走らせながら軽トラックを背景に畑で談話しているおばさまたちを見てほっこりした気持ちになる。
同時にこの風景は 20 年後も見られるのだろうか?と頭をよぎる。
軽トラと畑とおばさまたち。
今元気なおじいさんやおばあさんたちが農耕を辞めたらどうなるのかな??たったの20 年後にはこの景色が劇的に変わっているかもしれない。実はこのあたり前にある景色はあたり前ではなくなってしまうのかもしれない。
継承者あらわる
金沢市内から湯涌へ帰る途中に東浅川という地域がある。
そこでおじいちゃんの農園を継いだきよし農園のれいなちゃんがいる。
今の時期は金沢ゆずの収穫に忙しい。
金沢ゆずとれいなちゃん。
そんなれいなちゃんの愛車は軽トラックだった。軽トラックを背景に今後の展望を語るれいなちゃんは輝いている。ずっと応援したい、いや、むしろ私が応援されているのかもしれない。若手に背中を押されて。若者のエネルギーは 私のモチベーションをあげてくれる。いつもありがとうと言いたい。
軽トラとれいなちゃん。かっこ良すぎる。
秋をいただく
休日に家にいるとよくインターホンが鳴る。
先日は湯涌ホップの蔓をいただいたし、こないだはつるし柿をいただいた。
いただいた柿。
いただいた柿は牛スジを持ってきてくれた友人にお裾分けをした。さっそく皮を向いて吊るしてみた。
吊るしてみる。保存食は先人の知恵の塊だと思う。
寒さという調味料が干柿をおいしくする。
子供の頃、渋柿を食べてなんともいえない渋さが口の中を襲ってくるあの感覚、知らない人の方が多いのかな?
私は渋いという味覚を渋柿で学んだ。
柿の暖簾。
荷車の音
お向かいのおばあちゃんが毎日畑へ出かける。大体決まった時間に「ガラガラガラガラ」と荷車を押す音が聞こえてくる。 朝7時、昼の 11 時、昼の 14 時、夕方の 16 時 30 分頃。事務所にいるといつも聞こえてくる荷車の音。
おばあちゃんは畑に行くのが旅行に行くみたいなものだと私に言っていた。とても楽しいのだと言う。
このガラガラ音が私の時計の役割でもあり、音が聞こえないと雨なのかな?とか天気を伺えたりもする。
たまに道に野菜が転がっているのもきっとおばあちゃんの荷車から落ちてしまったのだと思う。
道に玉ねぎ。
こういった荷車のガラガラガラガラという音や、玉ねぎの落とし物という風景に私はとても癒されているのだと思う。
癒しを求めるとかそういったことではなく、ここに身を置くことで自然と知らぬまに癒されているのだと思う。
物事は永遠ではないし移ろい変わりゆくもの。 だけど、この風景は変わらず続いて欲しいものだと願ったりしてしまう私の欲望。
あるがままに、受け入れれるように素直に生きていきたいと思う 11 月の始まりなのであった。
おばあちゃんと荷車。
11 月は素直な心を大事にしていこう。
それでは、また 12 月に。
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執筆者プロフィール
加藤麻美(Rootive 代表)
森と生きるために木を利用し、地球に暮らす人に安心と癒しを提供する『Rootive(ルーティヴ)』代表。里山の保全活動や里山の資源を使ったイベント運営など、多彩な活動を展開。自然が大好きで、特に山をこよなく愛している。
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