煩悩バンザイ!石川県がもっと
楽しくなるウェブマガジン「ボンノ」

2022年全米1位のレコードぜんぶ買ってみた!〜下半期編〜|MOcA Diary カレーってからいですか #04

金沢・石引商店街のカレーマスター・モカさんが、カレーを仕込むかたわらでお送りするエンタメ系ゆるコラム。

 

前回に続き、レコードを集めてるくせに最新のヒット曲を全く知らない僕がビルボードホット100の1位、すなわち全米1位の曲をレコードで買って聴いてみるという修行の下半期編、それではいってみよう!上半期編はこちら

⑨Lizzo:About Damn Time

期間:2022年7月25日〜8月1日 (2週)

 

 

去年某イベントに我が子(8歳)を連れていったら、会場で初めて会った同い年くらいの黒人の男の子と仲良くなって遊んでたんですが、その日の夜に我が子が今日を振り返って男の子のことを「あの茶色い子」と言ったんでドキッ。そういう呼び方はよろしくないと注意したものの、じゃあ名前を知らない人のことを相手に伝えるのはどうしたらいい?となりました。そういう場合はどうしても見た目の特徴になってしまいます。「あの太ってる人。」みたいに。のっぽ、チビ、ハゲ、もじゃもじゃ、ガリガリ、出っ歯、シャクレ、ほくろ…まあそれは本人確認のためにこっそりやる程度なら仕方ないと思います。でもルッキズムが「​​​​外見至上主義」なら、人の見た目の特徴の多くは「本人がいちばん気にしてる外見の欠点(だと思いこんでいる)」逆ルッキズム。リゾたんは幼い頃からプラスサイズの体型に悩んでいたけれど、アーティストとして注目を集め始めた頃から吹っ切れて、自分の体型やセクシャリティや人種についてポジティブにいること、オープンにするこを名声を利用して啓蒙していく活動をしています。BTSが唱えるところの「LOVE YOURSELF」の精神。ちなみにリゾたんもBTSファンのARMYでジミン推し。「Butter」のカヴァーもしています。

 

しかし、全米1位クラスの影響力となるとその反動でルッキズム勢からの誹謗中傷もすごいでしょう。それでも彼女は『このアルバムは愛についての歌だわ。自分への愛であれ、家族への愛であれ、友人への愛であれ、大切な人への愛であれ、他人への愛こそが、この世界がより良い場所になるために必要なものだと、私は本当に信じているわ。』と発言しています。何か悩みがあって支援団体のグループワークに参加しているリゾたんが、支援者に「ストレスとセクシー」について発表してくれと指された途端に退出。スウェット上下ですっぴん姿からド派手なセクシー衣装に変身して踊るという、悩まなくてもいい問題に悩まされてる世界中の同志たちにメッセージ発しているMVも最高。そしてすっぴんのリゾたんも最高にキュート。リゾたんのMVは「Good As a Hell」も必見です。曲のタイトルは「About Damn Time(クソみたいに無駄な時間のこと)」。クソみたいなことに時間取られてるヒマないですよ!ちょっとGET LUCKYぽいナイルロジャースマナーのニュートロディスコ(合ってます?)も大好き!こういうサウンドのトレンドがもうしばらく続いてほしい。しかし、渡辺直美さんってビヨンセよりリゾですよね。

 

⑩Beyonce:Break My Soul

期間:2022年8月8日〜8月15日 (2週)

 

 

さあ、ビヨンセ王女蜂の降臨です。2021年に公開された映画『サマー・オブ・ソウル〜あるいは、革命がテレビ放映されなかった時』は1969年にハーレムでニューヨーク中の黒人が何万人も大集結したブラックミュージックのフェスの映像を再編集したもので、50年以上の時を経て初上映された作品なんですが、黒人の貧困と差別と暴力と闘ってきた先輩方からビヨンセ女王へと続くソウルの長い道は繋がっている。女王は母になっても闘っています。

 

曲の冒頭からフックまでサンプリングでフィーチャーされてる​​野太いシャウトは、ニューオリンズのベテランラッパーBig Freedia(ビッグフリーダ)のヒット曲「Explode」。原曲を聞いたら、いかちいマッチョラッパーのギャングスタな内容かと思いきや、ビッグフリーダさんは極太ボイスでも心は乙女、同性愛者のクイーンディーバ。そんなフリーダ姐さんが『♪一晩中働いたんだし今夜は爆発するのよ!ベルトを脱いで、バスに乗っていくのよ!怒りを解き放つのよ!心を解き放つのよ!仕事から解放されるのよ!時間から解放されるのよ!』と呼びかける歌。それに共感して、自分の新曲に取り込む女王もさすが。超セレブになってもちゃんと民衆の心を知っています。そしてMVに渡辺直美が出てる!ビヨンセ女王は日本のバラエティ番組も見てた?エア・ビヨンセものまねからここまで登ったなんてすごい!やっぱり頂点に立てる人は戦う先輩に敬意を表し、頑張ってる後輩を持ち上げます。しかし、2022年はハウスがきてますね。

⑪Nicki Minaj:Super Freaky Girl

期間:2022年8月22日(1週)

 

残念ながら配信のみでアナログ未発売。しかしですよ。みなさんMVの映像見ましたか?こんな過激な曲が全米1位になって、子どもたちが普通にスマホで見れるんですか?!テレビやラジオやバンバーガーショップで流れてるんですか?曲のタイトルを意訳したら『ドスケベ女子』。歌詞も『♪私のアソコを味わったら ほかの女とはもう満足できない 傘よりもびしょびしょ、アップルパイよりもネットネト ♪ 服を脱いでいるあいだに舐めてあげる、私が上になってもいいわよ ♪細かいテクを披露しながらアソコを中に入れることもできる ♪私を叩いたり掴んだりキスしてもいい 』うーん、やっぱスケールが違う。いや日本でもこういう内容のこと歌ってる女性のラッパーやシンガーはいらっしゃるだろうけど・・・いや、こういうこと歌ってオリコン1位になる世の中の方が、なんでも隠したり禁止したりするより健全か!英語も文化も分からないのに雰囲気がいいからって店内で洋楽を流してると実はエロくて男尊女卑な歌詞だったりするので気をつけよう!しかし、参りました…。

 

⑫Harry Styles:As It Was

期間:2022年8月29日〜9月26日(5週)

 

 

上半期から一度落ちてからの5週連続返り咲き!最初に聴いたときは「へ〜これが全米1位かぁ」くらいの感じだったんですが、こうやってライブ動画を見るとかっこいいキラーチューンだな!

 

⑬Steve Lacy:Bad Habit

期間:2022年10月3日〜10月17日(3週)

 

 

おお!Princeみたいなヌルッとした感じで大好き!スティーヴ・レイシーは現在24歳のシンガーソングライター、ギタリスト、プロデューサーでファッションモデルで18歳にしてグラミー賞にノミネートされたというパーフェクト超人。だけどこの歌の主人公は好きな人に告白できなくてウジウジと自問自答しているマッチョとはほど遠い人間。というのもスティーヴ・レイシーはクィア(LGBT=レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーのどれにも当てはまらない性的マイノリティ)であることをカミングアウトしていて、Princeに憧れてるとか。納得!人種差別やLGBTQ差別がいまだ根強いアメリカで黒人でもあり、クィアでもある彼が全米1位になって、コンサートでオーディエンスが大合唱しているのは革命的ですね!こういうことが起こるのもアメリカ!

 

⑭Sam Smith & Kim Petras:Unhory

期間:2022年10月24日(1週)

 

 

2019年に「男でも女でもない第3の性・ノンバイナリー、クィア」であることを告白したイギリスのトップシンガー・サム・スミスの新曲は、ドイツで男性の体として生まれたものの、2歳のときに自分の内面が女性であることを知って世論の力で法律を変えて世界最年少の16歳で性転換、トランスジェンダーのシンガーとしてデビューして大注目を集めているキム・ペトラスとのデュエット!タイトル「Unhory」は「罪深い、けがれた」という意味で『♪ママはパパがエッチなお店でけがれたことをしてハァハァしてることを知らない』という歌詞が全米(全英)1位になって、ティーンたちがTikTokで夢中になってるなんてすごい!やっぱりアメリカすごい国。イギリスも1位。表現の度が違う。

 

この曲はクィアであることをオープンにするまでのサム・スミスの内面の歌という指摘もあって歌詞に出てくる「パパ」と「ママ」はどちらもサム・スミス自身のペルソナとシャドウらしく「BODY SHOP」という歌詞もストリップ小屋・売春宿と自動車整備場という意味もあって「解放」と「心の整備」というダブルミーニングじゃないかという。うーん、22年間活動してきた「氷川きよし」を引退し「Kiina(キーナ)」になったキー様も歌手引退なんて言わずに、日本のサム・スミスになって自分の言葉で歌ってほしい。

 

⑮Taylor Swift:Anti-Hero

期間:2022年10月31日〜12月5日(6週)

 

 

全米でいちばん、いや世界でいちばんレベルで地位も名誉も財産も得ているミュージシャンなのに、いやそれだからこそ手に負えないモンスターになって苦悩している歌。存在がビッグすぎて誰も近づかないか金目当てで近づいてくるか。でもおばさんになってきたし、太ってきたし、このあと誰も見向きもされなくなっていく恐怖。MVでも、自分の葬式で遺族が遺産を巡って喧嘩をしているシーンがあるけど、死後のことまで考えてうんざりするなんてつらいです。頂点に登った人にしか分からない孤独。誰にも相手にされないのも孤独だけど、世界中の人から見られているのも孤独なんですね。で、そんな心境を歌にしてさらに輝いてスターになっていく…悪魔に魂を売らなきゃできない稼業です。

 

⑯Mariah Carey:All I Want For Christmas Is You

期間:2022年12月12日〜12月26日(3週)

 

 

テイラー、どきな!ここはアタイの席なのよ!というわけで1年経ってクリスマスはマライヤのご帰還!この曲を超えるクリスマスソングは無い独占禁止法に触れそうな曲です。

 

いや〜こうやって2022年の全米1位と向き合ってきたけど、離婚してしまって子どもに謝る歌、コロナ引きこもりのアンセム、南米ディズニー、連れ子ソング、ルッキズムに負けるなソング、ドスケベ女ソング、クィアソング、パパの浮気ソング、大スターの苦悩ソング…もう何でもありですね。日本のポップソングもこれくらい広くなりますように!2023年もレコード聴こう!

 

 

この連載のバックナンバー

 

Instagram:@Jo_house1972
Instagram:@mocurry
Twitter:@MoCurry

RECOMMEND ARTICLEおすすめの記事

WHAT’S NEW新着記事