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縄で表現するエロスとアート。緊縛師すけまるインタビュー

医王山の麓に建つ、とあるマンション。その一室に、北陸の緊縛愛好家が集まるサロンがあります。

 

なぜ、筆者がこのマンションを訪れたのか。それは2年前に参加した座談会で共感した「SMとアートの相関性」に対して、何らかのヒントを得られると思ったから。

 

大人たちの座談会「フェティシズムと感覚」トーク書き起こし

 

一般的に「SMプレイの一種」といった性的イメージの強い緊縛ですが、ルーツとなるのは戦国時代の武士に重宝された「捕縛術」。その一方で、近年はhajime Kinoko氏をはじめとする緊縛師がロープアートといった新ジャンルを切り拓き、海外を中心に芸術的観点からも注目を集めています。

 

果たしてそれらの緊縛とSMの緊縛は同一なのか。はたまたエロスとアートに境界線は存在するのか。

 

普段なかなか見ることのできない世界を、金沢を中心に活動する緊縛師のすけまる氏を通して、覗かせてもらいました。

 

すけまる
緊縛師。「北陸緊縛愛好倶楽部」代表。サロン緊縛処「縄亭」を運営するほか、2009年~2018年には片町DOUBLEにて「縄鬼まつりin金澤」を開催。その他にも数多くのイベントを企画・出演している。

エロスとは違った不思議な感情

はじめまして。以前すけまるさんが緊縛イベントを開催されていたときから「いつか話を聞いてみたい」と思ってました、ライターの吉岡と申します。今日はお会いできて光栄です!

すけまるさん

ありがとうございます。私自身もう緊縛を始めて30年以上になりますが、こうして縄について話すのは初めてかもしれませんね。

さっそくですが、すけまるさんが緊縛に興味をもったのはいつ頃ですか?

すけまるさん

今から40年ほど前。18から19の頃ですね。ある雑誌を読んで興味をもちました。

ある雑誌とは?

すけまるさん

いわゆるエロ本です。そこに緊縛された女性の写真が載っていたんですよ。

今ほど表だった感じで「緊縛」というジャンルは確立されてはいなかったですよね。

すけまるさん

はい、そうですね。とても衝撃的でした。

それは性的に興奮したという意味ですか?

すけまるさん

いや、それがエロという感情はまったく湧かなくて。

そんなもんですか。

すけまるさん

はい、それよりも緊縛によって強調されたボディラインの美しさだったり、身動きが取れなくなった人間が無機質化していく様だったり。今までに経験したことのない、不思議な感情が芽生えたのを覚えています。

初期衝動というやつですね。実際に緊縛を嗜むようになったのはいつ頃ですか?

すけまるさん

30を越えたあたりですかね。当時の妻と、夜の営みの最中に嗜むようになりました。

きっかけみたいなものはあったんですか?

すけまるさん

旅館に泊まったときに、なんとなく浴衣の腰ひもで妻の手首を縛ってみたんですよ。それがものすごく興奮して。十代の頃に見た写真がフラッシュバックしましたね。

 

趣味として緊縛を嗜んでいたすけまるさんですが、とある想いをきっかけに「北陸緊縛愛好倶楽部」や「緊縛サロン 縄亭」の設立、さらには北陸屈指の緊縛イベント「縄鬼まつりin金澤」の開催など、緊縛師としての活動を広げていきます。

すけまるさん

とにかく緊縛に興味のある人間を探したいと思ったんです。オープンな世界ではないので、こちら側から発信しないと好きな人は集まりませんから。

たしかにプライベートでは言いにくい部分もあります。

すけまるさん

それと自分のやっている「緊縛」を形にしてみたいという思いもあって、とりあえずホームページを作ってみたんです。

なるほど。反響はどうでしたか?

すけまるさん

やっぱり私と同じ気持ちの方が大勢いたようで、サイト内の掲示板は大いに盛り上がりましたね。

オフ会を始めたのもその頃ですか?

すけまるさん

そうですね。最初は3~4人から始まって、最終的に40人くらい集まるようになって。それならイベント化してしまおうと、2009年から「縄鬼まつりin金澤」を開催するようになったんです。

hajime kinokoさんも出演されてるんですよね。

すけまるさん

はい、2009年から合計4回出演されています。

縄鬼まつりは2018年でひと区切りを付けたそうですが、もう開催しないんですか?

すけまるさん

う〜ん、歳も歳だし。すごく体力を使うんですよ。だれか引き継いでくれる人がいるといいんですけどね。

復活したら絶対に行きます!

すけまるさん

ふふふ。

大切なのは相手との信頼関係。

緊縛の技術というのは、どうやって習得されたんですか?

すけまるさん

基本的に独学ですね。ネットや雑誌の緊縛写真を見ながら「こんな縛り方があるのか」「こうすれば美しい曲線が生まれるのか」といった感じで、試行錯誤していました。

なるほど。

すけまるさん

あとはオフ会に熟練の緊縛師をお招きして、見て学ぶということもしました。活動の幅を広げることでいろんな人と出会って、その中で縄の技術や緊縛に対する考え方をたくさん吸収できた。そういった意味では恵まれていたのかもしれませんね。

「緊縛に興味のある人間を探したい」という気持ちから、一歩踏み出していなければあり得なかった世界ですね。

すけまるさん

そうですね。緊縛を通じて知り合った人とのつながりは濃くて。それはなぜかというと、日常生活の中で自分の性癖をさらす機会はないけど、ここではその扉を開いた状態から交流が始まるんです。

たしかに。

すけまるさん

だから心の深いところで繋がることができるんです。もし、あのとき行動に起こしていなければ、そうした仲間とも出会えていなかったと思います。

切磋琢磨できる仲間って大事ですもんね。

すけまるさん

だからこそ現状に甘んじているわけにはいかなくて。緊縛の技術はつねに進歩しているし、スタイルも多様化している。私自身も、日々スキルアップしていかないといけないと感じています。

画像提供:すけまる

緊縛するうえで心がけていることはありますか?

すけまるさん

安全性ですね。相手は生身の人間なので「どこに縄が入ったら危険か」「どんな神経が通っているか」ということを第一に考えています。

たしかに、武術として成立するレベルですもんね。

すけまるさん

そうなんです。たかが縄1本でも、入り所によっては手足が痺れたりもしますから。

これから始めようと考えている人は、ぜひ覚えておいて欲しいですね。

すけまるさん

はい、安全第一です。

そのほかに心がけていることはありますか?

すけまるさん

独りよがりの緊縛にならないように、受け手とのコミュニケーションを大切にすることですね。その中で相手を美しく縛り上げながら、自分の性癖でもある加虐性愛も満たさないといけない。

加虐性愛とは?

すけまるさん

サディズムですね。私はエスエマー(SM愛好者)なので。

安全性と加虐性。この相対するふたつのバランスを保つのって難しそうですね。

すけまるさん

そうですね。受け手が縄に対してどう捉えているかによっても、変わってきます。

たしかに、初めての人と何度も対峙している人では、アプローチの仕方も変わりそう。

すけまるさん

それが緊縛の面白いところでもあるんですけどね。

「緊縛とは縄を使って抱きしめていくこと」という有名な緊縛師の言葉もありますが、相手との信頼関係やコミュニケーションも大切なんですね。

すけまるさん

そうなんです。

縛っているときはどんなことを考えているんですか?

すけまるさん

基本的には、なにも考えないようにしています。気の赴くままに縄をかける。強いて言うなら、相手から目を離さないことでしょうか。

エスエマーとしての緊縛と、観客のいる緊縛ショーでは、違いはあるんですか?

すけまるさん

違いますね。エスエマーとしての緊縛は受け手の方を注視しますが、ショーの場合は美しさを優先して、お客さんの目線でもっともキレイに見えるように意識します。

なるほど。ちなみに縛られた女性を「作品」と呼ぶのは語弊があるかもしれませんが、すけまるさんはひとつひとつの縄を積み重ねた結果が作品となるのか、それとも頭の中にあるビジョンをもとに作品を作り上げていくのか、どちらになりますか?

すけまるさん

ショーの場合はある程度、形をイメージしますね。その形をいかにキレイな手順で構成していくかが、緊縛の醍醐味だと考えているので。

造形ですね。

すけまるさん

さらにいえば生身の人間が素材となるので、受け手が苦しそうな表情をしたり、動いたりすることによって臨機応変に縄をかけなくてはいけません。瞬間の美といいますか、そういった儚さも緊縛の魅力なんだと思います。

画像提供:すけまる

緊縛するときはどんな縄を使うんですか?

すけまるさん

私が使っているのは緊縛専用の縄ですね。なめし処理のされた肌触りの良い麻縄で、仕上がりにも差が出ます。

緊縛専用の縄なんてあるんですね!

すけまるさん

緊縛師にとって縄は大切な道具なので、自分で手作りする人も結構多いんですよ。

たしかにホームセンターに売ってるような縄と比べると、肌触りが全然違いますね。ずっしり重みもあるし。

すけまるさん

これくらい重みがあると扱いやすいですね。これはまだ新しい方ですが、使えば使うほどしっとりしていきます。

初めて縄で縛ったときのことって覚えていますか?

すけまるさん

もちろん。それこそホームセンターで工事現場にあるような縄を買ってやりました。でも、女性は痛がるし、縛りにくいんですよね。

そんなもんですか。

すけまるさん

それから麻縄を使うようになって、なめしや油塗りを覚えてね。それでも結局、プロが作ったものには敵わないということで、縄専門店で買うようになりました。

 

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縄から紐解く。エロスとアートの境界線

近年アートとしても高い評価を受けている日本の緊縛。果たしてそれらの緊縛とSMの緊縛は同一なのか。はたまたエロスとアートに境界線は存在するのか。すけまるさんはどう捉えているのでしょうか。

すけまるさん

最初は縄をかけるのに精一杯で、正直アートだなんてこれっぽっちも思っていませんでした。それが色々なショーに出演するようになって、人それぞれのスタイルがあることに気づいたんです。

ふむふむ。

すけまるさん

芸術性や美しさを追求する人もいれば、加虐性を求めたSMチックな縄が得意な人もいる。100人いれば100通りの縄があるのが緊縛の面白さ。だから私は、緊縛をアートやエロスで括る必要はないと思っているんです。

シチュエーションや求められるものによっても変わってきますよね。

すけまるさん

そうですね。エスエマーの私でもショーでは芸術性を意識しますし。かといってプライベートでは加虐性だけを求めているわけでなく、身体のラインをキレイに見せるために縄数を減らすなど「美」を意識した細かいディテールには常にこだわっています。

なるほど〜。やっぱり面白いな〜!もっと深掘りしたいところですが、残念ながら本日はこのへんで。それでは最後に「これから緊縛はじめたい!」って人にアドバイスをお願いします。

すけまるさん

危険性さえ認識していれば基本的に自由。まずは家にあるひもで気軽に試してみてください。ただし、短期間で上達を目指すなら習いに行くのがベスト。その場合はちゃんと信頼できる緊縛師を探してください。

すけまるさんに教えてもらうことはできますか?

すけまるさん

大丈夫ですよ。興味のある方は、ツイッターのDM(@ComSukemaru)からメッセージを送ってみてください。

 

2年前に大阪で開催されたイベントを最後のショーとし、現在はサロンの運営を中心に活動しているすけまる氏。実際に会ってみると「緊縛に対する情熱は衰えることを知らず」といった感じで、またいつかショーにてその技を披露してくれるのではないかと、密かに期待しています。

 

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(取材・文/ヨシヲカダイスケ、撮影/林 賢一郎)

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