【HAND】未来につなぐ伝統の鼓動(和太鼓職人・大西哲郎)
神事や祭礼に欠かせない伝統工芸として、日本の音楽文化を支える和太鼓。生命力あふれる太鼓の響きは、日本人の魂をゆさぶり、感動を与えてくれます。今回は和太鼓職人の大西哲郎さんに会いに、石川県白山市にある工房を訪れました。
1981年金沢市生まれ。高校卒業後に国内有数の和太鼓メーカー「浅野太鼓」に入社。なめし、胴抜き、漆塗りなど、それぞれの工程が分業される中で、現在は革張りを中心に和太鼓の制作に取り組んでいる。
和太鼓職人の大西哲郎さん。
大切なのは「素材」を知ること。
大西さんが働くのは、石川県白山市にある「浅野太鼓」。江戸時代から続く、歴史ある和太鼓専門店です。入社してから2年間は「胴抜き」と呼ばれる、太鼓の形に木をくり抜く作業を担当。最初の頃は道具を上手く扱うことができず、手にはつねに豆や傷、アザが出来ていたそうです。
創業400年の歴史を誇る「浅野太鼓」。
現在、担当する桶胴太鼓の「革張り」は、太鼓の音色を作り出すために最も大切な工程。大西さんは20年近くもの間、この仕事にひたすら打ち込んでいます。
「頭の中で太鼓の音をイメージしながら革を張っています」と大西さん。使うのは針と糸だけ。革の厚さによって針を使い分け、その日の革の状態に合わせて、ひと針ごとに力を加減しながら縫っていきます。
工房は無音。脳内で太鼓の音が鳴り響く。
濡れた状態で張った革が乾くとこうなる。
「革は温度や湿度によって伸びたり縮んだりするので、日によって針の入れ方を工夫しないといけません。天然のものなのでひとつひとつの素材に個性があるのも革張りの難しいところ。脂の多い牛と少ない牛。それだけで音の質が大きく変わってくるんですよ」
職人には革の状態を見極め、力を加減する技量が求められるようです。
若き職人の育成も大切と話す、大西さん。
お祭りや演奏会で浅野太鼓が鳴り響く様子を見るたびに、自分自身が日本の伝統文化に携わっていることを実感するという大西さん。実際にそうした日本の伝統文化を背景とするものづくりを意気に感じ、最近は「浅野太鼓」に入社を希望する若者も増えたそうです。
邦楽という枠を超え、様々なジャンルの音楽でも使われるようになった和太鼓。「この流れに乗って、新しいことにどんどん挑戦していきたい」という大西さんが、これからどんな作品を手掛けていくのか、楽しみです。
Youtubeにて、大西さんの作業風景も公開中!
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浅野太鼓楽器店
石川県白山市福留町587-1
TEL.076-277-1717
営業時間/8:00~18:00(土日祝は〜16:00)
定休日/なし
駐車場/あり
※こちらの情報は取材時点のものです。
※新型コロナウイルス感染拡大のため、5月6日まで土日祝はアポイントメント制にて営業、平日は17:00までの時短営業中。
(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)