
人間関係トラブルの原因は?|裕子の艶言葉 #92
酒が入れば心も開く。金沢屈指の名門クラブに在籍し、現在は木倉町でワインバーを経営する裕子さんの酸いも甘いも知り尽くした人生談義。酒席で老若男女の心の声に耳を傾けてきた夜の蝶ならではの言葉は、まるで美酒のごとく身体の奥まで沁みわたります。
「コミュ障でなかなか人と仲良くなれない」と悩む人も多いのですが、実は「人と距離が近すぎる」方が、人間関係のトラブルは多くなります。
人間関係には、それぞれに適度な距離感や、距離を縮めるために必要な時間があります。それらを動物的に測れたり、もしくはちゃんと意識的に冷静に分析できたり。そのどちらかの能力がある人こそが、友人関係、恋愛関係、家族間、SNS上、すべての人間関係において悩みにくいのです。
人間には「パーソナルスペース」と呼ばれる空間が存在します。動物的に自分の不安感や恐怖心を感じる、縄張りのような領域のことです。
いませんか? 初対面なのに、一方的にまくしたてるように自分のことを話してくる人。
いませんか? 初対面なのに、質問責めで答えにくいことを聞いてくる人。
いませんか? 会って数回なのに、さも昔からの友人のようになれなれしく腕を組んできたりする人。
この質問によって思い出してしまう人がいるのであれば、その人はあなたにとって距離が近すぎる人の可能性があります。違和感があるから、思い出すのです。
古くからの友人関係であっても、距離が近すぎることによるトラブルの方が多いものです。若い頃はパワーもストレス耐性もあるので、近すぎることへのトラブルにも対処できますが、大人になればなるほどそのパワーは減少。人との適切な距離感が身につき、親しい友人は少なくなっていくことの方がほとんどです。
友人関係のみならず、ママ友や仕事関係、SNS上での関係性も同じだと思います。過剰に干渉したり、先の予定をどんどん埋めようとしたり、行動や思考をコントロールしようとしたり。そんなに親しくないはずなのに、知っているかのように噂話をしたり。仲良くしていた関係のはずなのに、LINEやSNSのコメントの返信が遅くて怒りに変わったり。いずれも適切な距離が取れておらず、近すぎることが問題なのです。
ではどうしてそうなるのか?相手はギュッと近づいてくるのか?
このコラムをいつも読んでくださる方は、ピンとくるかと思います。 そうです。【依存心】です。過度に「誰かと繋がっていたい」と思いすぎているんです。
それは、何かの原因で心に植えられた不安感や喪失感のせいかもしれません。それが続くと「離れられたら困る」という支配欲が強くなり、DVやモラハラ、パワハラ、結婚している相手であれば経済的な制裁にまで繋がってしまいます。
では、受け入れる側は、どうして受け入れてしまうのか。 それもまた【依存心】です。「距離が近くてストレスだけど、嫌われたくない。そして実は頼られて嬉しい」という思いから、文句を言いながらも付き合ってしまうのです。DVやハラスメントの関係性も、よく似ています。心理学用語では【共依存】と言います。
ただし逆に、相手の懐にすっと入り込んでも違和感がなく、それを自然にやってのけて相手に不快感を与えない、そんなプロのコミュニケーションの達人もいます。グッと相手の心に飛び込んで、あっという間に心を溶かしてしまう。そんな人懐っこさで、会ってすぐに人からの信頼を得られる人が存在するのです。
そういう人たちはごく僅かであり、特殊な能力です。きっとほんの一部の、本物のリーダーになっていく人たちが持つ才能なのだと思います。
あたしはと言うと。若い頃はさんざん間違えてきました。生まれながらの過剰なサービス精神により、自分の心や体力を削って相手の心を溶かすことに必死になり、気がついたら自分で自分の首を絞めるように追い詰められ、ストレスを溜め込む。そんな日々の繰り返しも多かったです。 今はやっと、体力も気力も削ぎ落とされて、ある程度のお付き合いしかできなくなりました。そのぶん、人間関係がずいぶん楽になりました。
出来ないことに「NO」と言える勇気をもってください。 何度考えても、数日寝て思い出しても「嫌だ」と感じることには、「NO」を伝えてください。 思いやりを持ちながら、相手へ意思を伝えることはとても難しいです。しかし誠意をもって、そして強く、伝えてください。
そしてこれを読んで「自分は人との距離が近すぎるかもしれない」と思った、そこのあなた。 きっとあなたは大丈夫です。 気づけている人は、気をつけられます。 ちゃんと逃げずに自分と向き合うことが出来る人です。だから、大丈夫です。人を思いやったお付き合いができる人なのです。
「私が友人に求めるのは、ユーモアと下心のない態度。 これは友情の最も大切な美点です。 ユーモアとは、頭が良くてもったいぶらないこと。 下心のない態度とは、寛容で親切ということです」
あたしが好きな、フランソワーズ・サガンの言葉です。
人生も折り返し地点。 残りの人生は、ユーモアがあって下心のない人たちと、心地よい距離感でお付き合いしていきたいと思っております。
艶小噺
最近もっぱらひとり旅が多かったのですが、久しぶりに親友と2人旅。 電車に揺られ、長野県松本市の「さくらももこ展」へ。
元々りぼんっ子で、ちびまる子ちゃんと同い年の時にアニメ放送が始まりました。
展示の間は終始ニコニコ微笑んだり、声を出して笑ってしまったり。時には懐かしさに胸の奥底をギュッと掴まれたり。 53歳という、あまりにも早くこの世を去ったさくらももこさん。 そんなさくらももこさんの残した素晴らしい作品の数々と共に大人になったことを、とても誇らしく思う大切な時間になりました。

