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【NATURAL LIFE】壮大な夢 #03

日本には漆の文化がある。

 

ましてや石川県には輪島塗や山中塗などがあるおかげで、より身近かもしれない。そんな漆の国内自給率はや1%。9割以上は輸入品。

 

背景にはこんな事情がある。漆掻きは人の手がかかる仕事。輸入元の多くは、中国や東南アジア。つまり人件費が低い。漆の価格も安くなるので(中国産の価格は国産の10分の1)、高く感じる国産の漆が売れなくなった。安価なプラスチック製品や合成樹脂品の台頭で、漆器自体の需要が低下したことも影響している。

 

私は人の夢の実現を聞いてこんなに感動したのは初めてかもしれない。

 

彼は学生時代に輪島塗に出会った。職人さんが言った。「輪島塗は職人は減るし、国産の漆は減ってきているし 大変なんだ」と。それから彼は山形県の職員となった。プライベートでは40年間漆の木を植え続け、育てた。合間を見て、漆掻き名人とよばれる人のところへ歩き周り漆掻きの技術を習得していった。

そして、60歳。定年退職と共に漆掻き職人となった。

 

自分で漆を植え、育て、漆を掻く。学生時代に定年後の自分を想像し計画し実行する。なんて素晴らしい志なのだろうと。漆に限らず、国産のモノがなくなっていく背景はどれも同じ理由だ。これは、本当に簡単には解決できない大きな問題だなと日々悩み、螺旋状にグルグルとしている。

 

※こちらの記事は、2017年5月末発行の『BonNo』vol.70に掲載されたものです。

 

 

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執筆者プロフィール

加藤麻美(Rootive 代表)
森と生きるために木を利用し、地球に暮らす人に安心と癒しを提供する『Rootive(ルーティヴ)』代表。里山の保全活動や里山の資源を使ったイベント運営など、多彩な活動を展開。自然が大好きで、特に山をこよなく愛している。

HP:Rootive
ツイッター:@rootive_forest
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フェイスブック:@rootive.kanazawa

 

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